花粉症といえばスギやヒノキの春が代表的ですが、夏の時期でも草の花粉に悩む人が増えています。全国で約100人に15人の人がスギ花粉以外の花粉症で悩んでいるとも言われています。
ここでは、7月、8月の花粉症の原因となる花粉の地域別飛散状況、夏の花粉症の症状の特徴や対策法などをご説明します。
参照:2020年版鼻アレルギー診療ガイドライン 「花分検索ハンドブック」(花粉研究会著)
目次
1.《花粉別》地域ごとの飛散状況
(1)イネ科
イネ科の雑草は全国に生息していますが、花粉症の原因となるイネ科雑草の主なものは、カモガヤ、ハルガヤ、ホソムギ、オオアワガエリ、ススキなどです。
イネ科や後述するブタクサなど草の花粉は、スギなどの木の花粉と異なり数百メートルぐらいしか飛びません。よって草むらに近寄らないことが一番の防御になります。
イネ科花粉症では鼻炎や目のかゆみといった典型的な花粉症の症状が起こらずに、咳が止まらない、喘息に似た症状だけが起こることもあります。
ひとつの種類のイネ科花粉のアレルギーになると、別の種類のイネ科花粉にもアレルギー反応することがあるので注意してください。
カモガヤ
オオアワガエリ
スズメノカタビラ
ススキ
●イネ科の7月、8月の地域別飛散状況
イネ科は飛散ピークが2度あります。最初は5~6月、2回目が8月~9月です。田植えや稲刈りと関係しているようです。6月下旬から7月は飛散が少し落ち着くようですが、それでも各地で飛んでいます。
5~6月はカモガヤ、オオアワガエリ、ネズミホソムギなどのイネ科花粉が多く飛び、8~10月にはススキなどの花粉が多く飛びます。
イネ科花粉症の詳しいことは、こちらをご覧ください。
【花粉症症状】この時期一番多いイネ科の花粉症とは?特徴や症状のまとめ
(2)ブタクサ属(キク科)
ブタクサは北アメリカ原産で、第二次世界大戦以降に日本でも全国的に広まりました。秋の花粉症の原因として有名です。花粉のサイズが20μm前後とスギやヒノキよりもひとまわり小さく、ノドのかゆみや咳などの症状を起こしやすいのが特徴です。
ブタクサに似ている雑草に「セイタカアワダチソウ」があります。ブタクサと同じキク科の植物です。セイタカアワダチソウの花粉は虫媒花で花粉の生成量は少ないですが、花粉症の原因植物のひとつです。
セイタカアワダチソウは、葉が笹のような流線形でなので、そこでブタクサと見分けます。
ブタクサ
セイタカワダチソウ
●ブタクサの7月、8月の地域別飛散状況
ブタクサ花粉の飛散は9~10月がピークですが、地域によっては8月から飛び始めます。関東では8月下旬ごろから飛散量が増加します。
➡ブタクサ花粉症とは?
(3)ヨモギ属(キク科)
ヨモギは、よもぎ餅のように食べ物として利用されたり、薬草として使用される一方で、秋の花粉症の代名詞にもなっています。
ヨモギ
●ヨモギの7月、8月の地域別飛散状況
ヨモギ花粉は9月、10月ごろに飛散ピークを迎えますが、地域によっては8月から飛び始めます。
(4)カナムグラ(アサ科)
カナムグラも秋の花粉症の代名詞のひとつ。日本全国の空き地や道端に生息しています。つるを巻いて、木や電柱、ガードレール等に絡みつきます。花期は8月~10月です。
カナムグラ
●カナムグラの7月、8月の地域別飛散状況
カナムグラは地域によっては8月から花粉が飛び始め、9月、10月ごろにピークとなります。
(5)スギ(ヒノキ科)
スギはヒノキ科に属します。ヒノキ花粉と共通抗原性(*花粉症の原因となるアレルゲン物質の構造が似ているため身体がどちらにも反応する)があり、スギ花粉症の人がヒノキに反応したり、その逆もあります。スギ花粉は田舎の山林から風にのって数千キロも離れた都心部まで飛散しますが、戦後の植林政策で大量に植樹されたスギの樹齢からみて、20~30年先まで大量飛散が継続するでしょう。地域差はありますが、一般的には2月下旬から3月中旬に飛散ピークを迎えます。
スギ
●スギの7月、8月の地域別飛散状況
関東では7月に季節はずれのスギ花粉がわずかに飛ぶことがあります。
(6)ヒノキ(ヒノキ科)
2018年は歴史的に大量飛散したヒノキ花粉。スギ花粉と共通抗原性(*花粉症の原因となるアレルゲン物質の構造が似ているため身体がどちらにも反応する)があります。一般的に3月下旬から4月中旬に飛散ピークとなります。
ヒノキ
●ヒノキの7月、8月の地域別飛散状況
通常、7月、8月にヒノキの花粉が飛ぶことはありません。
➡ヒノキ花粉の詳しいことはこちら
ヒノキ花粉の実態やヒノキ花粉症の原因物質アレルゲンとは?《埼玉大・王青躍研究室大学院生・五島孝浩さんインタビュー》
(7)ハンノキ属(カバノキ科)
ハンノキはカバノキ科ハンノキ属のひとつで、湿った土地に生える落葉高木です。カバノキ科ハンノキ属にはその他に、ヤシャブシ、オオバヤヤシャブシなどがあります。
カバノキ科とブナ科(コナラなど)の花粉の間にはそれほど強くはないものの共通抗原性(*花粉症の原因となるアレルゲン物質の構造が似ているため身体がどちらにも反応する)があるとされています。
湘南鎌倉総合病院の谷口正実先生(元、国立 相模原病院)は、「シラカバなどのカバノキ科花粉症はブナ、コナラ花粉でも反応し、北海道や長野だけなく東京や神奈川でも患者が増加。症状が咳だけで喘息と間違われることもよくある」と注意を促します。
ハンノキアレルギーになると、モモなどの果物を食べると口の中や周りがイガイガする「花粉ー食物アレルギー」(口腔アレルギー症候群ともいう)を併発することがあるので、注意が必要です。
谷口正実先生の詳しいお話はこちらをご覧ください↓↓
喘息と思ったらイネ科やカバノキ科花粉症だった?子どもの舌下免疫療法で小児喘息を予防?~谷口先生に聞く(後編)
ハンノキ
ヤシャブシ
コナラ
●ハンノキ属の7月、8月の地域別飛散状況
例年通りの気象条件では、ハンノキ属の花粉が7月、8月に飛ぶことはほとんどありません。
(8)シラカンバ(カバノキ科)
シラカンバ(シラカバともいう)はカバノキ科に属します。北海道や長野県で多く生息し、それらの地域ではシラカンバ花粉症が多く発症しています。ブナ科のブナやコナラと共通抗原性があり、シラカンバが生えていない東京や神奈川でもシラカンバ花粉症の人が増えています。モモなどの果物を食べると口の中や周りがイガイガする「花粉ー食物アレルギー」(口腔アレルギー症候群)を併発することがあるので、注意が必要です。
シラカバ
●シラカンバの7月、8月の地域別飛散状況
例年通りの気象条件では、シラカンバ花粉が7月、8月に飛ぶことはありません。
2.夏の花粉症の特徴や対策法
7月、8月は主に、イネ科など草の花粉が原因で花粉症になります。8月になるとイネ科だけでなく、秋の花粉症の代名詞でもあるブタクサ、ヨモギ、カナムグラなども飛び始めます。
・草が原因の花粉症は喉のかゆみや咳に注意
イネ科やブタクサなど草が原因の花粉症でも、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみといった症状が中心ではありますが、中にはそれらの症状が全く起こらずに、ノドのかゆみや咳だけが現れることがあります。草の花粉の中にはスギなどの木の花粉と比べてサイズが小さいものがあることが原因のひとつとされています。特にブタクサ花粉は、表面がデコボコしているため花粉が細かく破裂しやすく、ノドの症状を起こしやすいようです。
また、ノドのかゆみだけでなく、皮膚や頭皮のかぶれやかゆみなどの症状もありますので、注意をしてください。
➡大久保公裕先生が夏や秋の花粉症の特徴を解説↓
【イネ科やブタクサ花粉症とは】花粉症年間カレンダーで今後の対策を検討しよう!~大久保公裕教授インタビュー(後編)
・草の花粉症対策は近寄らないこと
スギやヒノキといった木の花粉は風に乗って数千キロも飛び、空の上から地上に降り注ぐように飛散しますが、イネ科やブタクサなど草の花粉はせいぜい数百メートルしか飛びません。よって、花粉対策には草むらに近寄らないことが一番です。
草の花粉は下から身体にぶつかってくるように飛んでくるので、背の低いお子さんが花粉症になりやすい傾向があります。
・室内や外出時の花粉予防
夏の花粉症の予防にはスギやヒノキの春の花粉症と同様に、花粉を身体に侵入させないように対策してください。
♦マスクを着用する。
♦ワセリンを鼻の穴に塗って花粉をキャッチする。
♦目元カバーがついたメガネを着けて花粉が目に入るのを防ぐ。
♦帽子を着用する。
♦外出から戻ったらシャワーしたり着替えをして花粉を体から取り除く。
♦こまめに掃除機をかけ、水ぶきしてホコリをとる。
♦自宅や職場のそばに草むらがあれば、窓をできるだけ開放しない。
・つらい症状には薬で対処
鼻水や目のかゆみ、ノドのイガイガ、皮膚のかゆみなど起こってしまった症状を鎮めるには抗ヒスタミン薬などで対処します。
花粉症向けの処方薬についての説明や、処方薬のと同じタイプの市販薬については以下をご覧ください。
【2022年版】花粉症処方薬の効き目と眠気の比較や同じタイプの市販薬の有無~アレグラ、タリオン、ザイザル、デザレックス、ビラノアなど
花粉症の目のかゆみに病院で処方される目薬については以下をご覧ください。
【花粉症薬】花粉症でよく処方される医療用点眼薬や人気の市販目薬とは
・花粉-食物アレルギー(口腔アレルギー)に注意
花粉のアレルゲン(*花粉症の原因となるたんぱく質)と似ている構造を持つ果物や野菜を食べると、口の中や周りがイガイガしたり腫れることがあります。これを「花粉-食物アレルギー症候群」、または「口腔アレルギー」といいます。
症状がひどいときには、アナフィラキシーショック(重いアレルギー反応)を起こすこともあるので、おかしいなと思ったら早めに医師に相談してください。
3.まとめ
7月、8月の花粉症はイネ科花粉が中心ですが、秋の花粉症のブタクサ、ヨモギ、カナムグラ花粉も飛散を開始します。これらの雑草は公園や空き地、芝生など身近なところによく生えています。
イネ科やブタクサなどの花粉症は、基本的にスギ花粉症と同様に、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみという4大症状が中心ですが、人によってはそれらの症状がなく、皮膚が赤くなったり、咳、ノドのかゆみが起こったりします。原因がわからずこれらの症状が出て困っているときには早めにアレルギー検査をしてみてください。
アレルギー検査のくわしいことは以下をご覧ください。
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