気象庁によると、2017年10月の日本列島は数日の周期で変化する天気模様で、沖縄、奄美は平年より気温がやや高いものの、それ以外の地域では平均気温並かやや低いと予測されています。
10月も9月に続いて秋の花粉症のシーズンです。そこで今回は、この時期に原因となる花粉の種類、地域別の花粉情報、10月の花粉症の特徴や注意する点、対策法などについてお伝えします。
目次
1.10月の花粉の種類
代表的な10月の花粉症の原因花粉は、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、そしてイネ科です。また、いくつかの地域で少量のスギ花粉が飛び始めます。
それぞれの植物の特徴をみていきましょう。
ブタクサ
ブタクサ
ブタクサは春のスギ花粉に次いで多くの人の原因花粉です。
キク科の一年草で、北アメリカ原産の外来種です。北米軍が持ち込んだことから「マッカーサーの置き土産」とも呼ばれていますが、”輸入元”の米国では花粉症といえばブタクサがメインで全人口の5~15%がブタクサ花粉症との統計があります。
7月~10月頃に黄色い花をつけます。草の高さはだいたい50〜150cmです。ブタクサとオオブタクサがあります。オオブタクサはブタクサより高く2~4mになります。
ブタクサ花粉は飛散距離が数10cmと短いことが特徴です。ブタクサ花粉は風にのって遠く飛ぶことはないため、ブタクサに近寄らないことが一番です。
またブタクサ花粉の大きさはスギ花粉の半分程度と粒子がとても細かく気管支などにに入りやすいため注意が必要です。ブタクサ花粉症が原因で喘息になる人もいることから、「喘息草」と呼ばれることもあります。
●ブタクサとは違う「セイタカアワダチソウ」
ブタクサに似ている雑草に「セイタカアワダチソウ」があります。ブタクサと同じキク科の植物です。セイタカアワダチソウの花粉は虫媒花で風媒花ではないので、花粉の生成量は少ない上に比較的重く、花粉症とは関係ないという説もありますが、「花分検索ハンドブック」(花粉研究会著)によると、花粉症の原因植物のひとつです。
ヨモギ
ヨモギはキク科の多年草で、日本全国全国各地の野原や河川の土手などに自生しています。
特有の香りがあり草餅にも使われる身近な植物です。お灸のもぐさ(艾)もこのヨモギからできています。さらには生薬として漢方では「艾葉(ガイヨウ)」と呼ばれて利用されています。食べたり、お灸にしたり、薬にしたりと万能植物なのですが、残念なことにブタクサ同様秋の花粉症の代表植物です。
カナムグラ
ツル性の1年草で、道端や荒地に覆うように生育します。とても繁殖力が強い雑草で、茎にたくさんトゲがあり、他の植物にからみながら成長していきます。日本全国に生えていますが、関東を中心に秋にたくさん飛散します。草汁に触れたりすると、皮膚炎、かぶれやアレルギーになることがあります。
悪いとこだらけのようなカナムグラですが、実を含めた全ての草を天日乾燥させたものを生薬「葎草(りつそう)」と呼び、胃を丈夫にしたり、利尿や解熱に効能があるとされています。
イネ科
イネ科の花粉症はピークが2回あり、1回目は5月~6月のイネの田植えのシーズン、2回目が8月~9月の刈り入れのシーズンです。
花粉症の原因となるイネ科の植物はたくさんあります。カモガヤは5~7月、ハルガヤは4~7月、ギョウギシバは6~8月、アシやススキは8月~9月に花粉が飛散しています。
芝生にもイネ科の雑草は含まれており、欧州ではイネ科の花粉症がメインです。2017年の夏は異常気象で気温が上昇したため欧州各国で例年より花粉症患者が増えたと報道されています。
スギ
日本人の4人にひとりがスギ花粉症ではないかといわれている、花粉症の代名詞のスギ花粉が飛散するピークシーズンは春です。しかし10月あたりから少量ながらも比較的広い地域で花粉が飛び始めています。
スギは日本の国土の約12%に占めると計測されています。ほとんどは戦後、住宅用木材として使うために植えられた人工林です。しかし1964年の木材輸入の貿易自由化より海外から安価なスギが輸入されたことで、日本のスギ林は伐採や植林が進まずに放置されました。それが今大量の花粉を撒き散らして花粉症の最大の原因となり、またスギ林のせいで日光が差し込まなくなった土壌はやせ細り、土砂災害を誘発しているといわれています。
2.10月の地域別花粉情報
地域別に例年の10月の花粉情報を確認しましょう。比較のために、表には9月、11月分も加えています。年ごとに天候の違いなどで開花時期の差がありますので、表の内容は傾向としてとらえてください。
北海道地域
北海道地域は10月、11月と原因花粉が飛んでいないようです。
東北地域
東北地域では9月から継続して10月もブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科の花粉が飛散しています。
関東地域
関東地域では10月も花粉のピークが続きます。特にブタクサ、カナムグラ、そして夏からずっと飛んでいるイネ科が激しいです。
スギも飛び始めています。症状の重いスギ花粉症の方は春に向けて対策をスタートする方がいいでしょう。
東海地域
10月の東海地域は、カナムグラ、イネ科、ヨモギが少量ながらも飛んでいます。年末にむけてスギも飛び始めます。
関西地域
関西地域の10月は、ヨモギ、カナムグラ、イネ科が特に初旬に多く飛散します。ブタクサも継続して飛んでいます。スギも10月から飛び始めています。
九州地域
10月の九州地域は、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科が9月から継続して飛散しています。スギも飛び始めています。
3.10月の花粉症は風邪と見分けにくい
10月は秋から冬への季節の変わり目で天気の変化が激しく体調を崩しがちです。そのせいで風邪をひく人も多いのですが、咳や喉の痛み、微熱といった症状が、秋の花粉症の症状なのか風邪によるものか、区別がつかないことがよくあります。
花粉症の症状といえば一般的なのが、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみですが、スギ花粉と比べて秋の原因花粉が小さいことが原因で、花粉が鼻の粘膜フィルターをすり抜けて喉まで届き、咳が出たり喉のイガイガを起こることがあります。
また鼻づまりやくしゃみといった花粉症による体調悪化が原因で、体が微熱を発することもあります。
こういった症状が風邪の症状と似ているため、悩んでしまうことが多くあるようです。
4.花粉症と風邪の見分け方
それでは花粉症と風邪の基本的な見分け方をご紹介しましょう。
■咳のタイプで見分ける
•「コホン」という乾いた軽いタイプ⇒花粉症
•「ゴホン」という痰(たん)が絡んだような重いタイプ⇒風邪
秋の花粉症では咳や喉のイガイガが起こることもあります。
「コホン」と乾いたタイプの咳は、気管支のけいれんや気道の炎症が原因といわれていますが、花粉症が原因の咳も一般的にこのタイプになります。
「ゴホン」という痰が絡んだようなタイプの咳は、喉の奥で炎症が起こっているためで、風邪の症状であったり、場合によっては気管支炎や肺炎の可能性もあります。咳がおさまらないときには早めに診察してもらう方がいいでしょう。
■鼻水のタイプで見分ける
•透明でサラサラな鼻水⇒花粉症
•黄色味がかった粘り気のある鼻水⇒風邪
花粉症の鼻水は涙と成分がほとんど同じであるため、無色で粘り気のないサラサラとした鼻水、いわゆる「水っぱな」で、水のような鼻水が止めどなく流れ出て、いくらかんでも次から次へと鼻水が出てきます。
一方、風邪の鼻水は白~やや黄色い色でねっとりと粘土があるものになるようです。それは風邪の鼻水には細菌やウイルスを退治した白血球が混じっているからです。
■くしゃみのタイプで見分ける
•1日に何度も出る⇒花粉症
•頻度はさほど高くない⇒風邪
一般的に風邪の場合にはくしゃみが出ても頻度は高くありません。それに対して花粉症の場合には1日に何度もくしゃみが出ます。厚生労働省のガイドブック『適切な花粉症治療のために』によると1日のくしゃみの回数が21回以上の人は花粉症の重症度レベルの中でも最重症度といわれています。
■熱で見分ける
•平熱〜微熱⇒花粉症
•微熱〜高熱⇒風邪
花粉症では高熱が出ることはほとんどなく、熱が出る場合でも微熱レベルです。
■目のかゆみで見分ける
•目のかゆみがある⇒花粉症
•目のかゆみがない⇒風邪
風邪の場合、目がかゆかったりヒリヒリすることはありません。花粉症でも目のかゆみなどの症状がないこともありますが、目のかゆみがあるときは花粉症と疑う方がいいでしょう
5.口腔アレルギーにも注意
10月の花粉症の原因となる花粉は、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科、スギと多種にわたりますが、それぞれの花粉アレルゲンに関連する「口腔アレルギー症候群」という疾患が発症する可能性があります。
「口腔アレルギー症候群」とは、花粉症の人が果物、野菜、ナッツなどを食べた時に、口の中や唇の違和感やしびれ、顔面の腫れ、呼吸困難などが出現する症状のことをいいます。ラテックスを含んだゴムでも同様の症状を起こすので、「ラテックスフルーツ症候群」とも呼ばれています。果物で口腔アレルギーになる人が多いことから「果物アレルギー」と呼ばれることもあります。
口腔アレルギーは花粉症の原因となる花粉アレルゲンのタンパク質と特定の食べ物のタンパク質が似ているため、体の免疫が間違って反応してしまうことが原因です。これを「交差反応」といいます。
口腔アレルギーはひどいときにはアナフィラキシーショックを起こすことがありますので、変だなと思ったときは早めに医師に相談してください。
花粉と交差反応する可能性がある代表的な食べ物
●ブタクサ:
メロン、スイカ、バナナ、ズッキーニ
●ヨモギ:
セロリ、ニンジン、マンゴー
●カナムグラ:
メロン、スイカ、セロリ、ニンジン
●イネ科:
メロン、スイカ、ミカン、キウイ、ピーナッツ、トマト、ポテト
●日本のスギ・ヒノキ:
トマト
●シラカバ:
リンゴ、モモ、洋ナシ、さくらんぼ、キウイ、マンゴー、あんず、ヘーゼルナッツ、セロリ、ニンジン
●プラタナス:
リンゴ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、レタス、とうもろこし
6.おすすめの治療薬
すでに発症している10月の花粉症には薬で症状を緩和することが求められます。その際は原因物質ヒスタミンが炎症を起こすのを抑えるタイプの抗ヒスタミン薬の服用をすすめられることが多いです。
●秋の花粉症のおすすめの市販内服薬
【鼻炎薬7選】効き目と眠気で選ぶ、9月の花粉症におすすめ市販内服薬7選
●目のかゆみにおすすめの点眼薬
【点眼薬3選】花粉症点眼薬を選ぶポイントは?おすすめ市販点眼薬3選
●抗ヒスタミン薬が入っている咳止め液
咳が出るときには、抗ヒスタミン薬が入っている咳止め液も効果的です。
これらの咳止め液を服用するときは、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬等などを同時に服用しないでください。またこれらの咳止め液を飲むと眠気があらわれることがあるので、車などの乗物や機械類の運転操作は避けるようにしてください。
どれもインターネット通販で購入できます。
♦新トニン咳止め液
♦新ブロン液エース
♦ジキニン液D
♦アネトンせき止めZ液
7.花粉症予防のコツ
秋の花粉症予防のコツは一般的な花粉症向けのものと基本的には同じですが、スギ花粉より秋の原因花粉がサイズが小さ目なので、使い捨てマスクを選ぶ際には、ウイルスやPM2.5対応のものを選ぶ方がいいかもしれません。
日常の生活の中で、できることから積極的に取り入れてください。
花粉症予防のコツ
♦マスクを着ける。
♦ワセリンを鼻の穴に塗って花粉をキャッチする。
♦目元カバーがついたメガネを着けて花粉が目に入るのを防ぐ。
♦外出から戻ったらシャワーしたり着替えをして花粉を体から取り除く。
♦可能であれば室内にいる。
♦できる限り窓やドアを閉めておく。
♦こまめに掃除機をかけ、水ぶきしてホコリをとる。
8.おわりに~東京の花粉飛散情報
10月は春に次いでたくさんの人が花粉症に悩むシーズンなのですが、スギやヒノキの花粉症と比較して、社会的な認知がそれほど広まっていないことが難点です。
花粉飛散情報も全国レベルで展開されているものは見当たらないのですが、東京においては2つの機関で情報を提供しています。近隣の方は活用してみてはいかがでしょうか。
*参照:「鼻とアレルギー診療ガイドライン2013年版」