オオブタクサ(2020年8月撮影)
8月中旬頃から花粉症の原因となるブタクサやイネ科など『秋の花粉』が飛び始めています。9月はそれらの花粉が全国的にピークを迎える時期。ここでは、9月の原因花粉の種類、地域別の飛散時期や対策法などについてわかりやすくお伝えします。
(参考文献:「鼻とアレルギー診療ガイドライン2016年版」、「花粉学辞典(日本花粉学会編)」、「花粉症の真実(佐橋則男・岸川禮子)」など)
➡処方薬と同じタイプの市販薬を知っているとなにかと便利です↓↓
【2020年版】花粉症処方薬の効き目と眠気の比較や同じタイプの市販薬の有無~アレグラ、ザイザル、アレロック、タリオン、ビラノア、デザレックスなど
目次
1.9月の原因花粉の種類と飛散量
9月に多く飛散する花粉症の原因花粉は主に、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、そしてイネ科です。それぞれ特徴や、地域ごとの9月、10月の飛散量をみていきましょう。
(1)ブタクサ
●特徴
ブタクサ(2019年9月6日撮影)
オオブタクサ
ブタクサに間違えられることの多いセイタカワダチソウ
ブタクサはキク科の一年草で、北アメリカ原産の外来種です。7月~10月頃に開花します。ブタクサの高さは約50〜150cmですが、オオブタクサはブタクサより高く2~4mになります。
ブタクサは明治初期に、オオブタクサは第二次世界大戦の頃に最初に日本に入りましたが、北米軍が多く持ち込んだことから「マッカーサーの置き土産」とも呼ばれています。日本ではスギ、ヒノキ花粉症が圧倒的ですが、”輸入元”の米国では花粉症といえばブタクサがメインで全人口の5~15%がブタクサ花粉症との統計があります。
ブタクサ花粉は背丈が低いのでスギのように遠くまで飛びません。せいぜい数百メートルと言われています。したがって、予防するには草むらなどブタクサが生えている所に近寄らないことが一番です。
またブタクサ花粉の直径は約20μmで、スギ花粉が30μmなのと比較すると、粒子が小さめであること、さらに、花粉の表面がとげのような突起状になっているため、空中で粉砕して細かくなりやすい傾向があります。細かい粒子は気管支に侵入しやすいので、注意が必要です。
オオブタクサ花粉(埼玉大学提供)
●地域ごとの飛散量
【表の見方】
(参照:「鼻アレルギー診療ガイドライン2016」)
ブタクサ属の花粉は、関東や東北で9月に多く飛散します。関西や九州でも9月中旬から下旬にやや多く飛びます。
➡ブタクサといえば秋の花粉症の代名詞。順天堂大学 伊藤潤先生がやさしく解説!↓↓
(2)ヨモギ
●特徴
ヨモギ
ヨモギはキク科の多年草で、日本全国に自生してます。特有の香りがあり草餅にも使われる身近な植物です。お灸のもぐさ(艾)もこのヨモギからできています。とても繁殖力が強く、ブタクサ同様秋の花粉症の代表植物です。
ヨモギは花粉を吸入するだけでなく、草の部分を食用、薬用として用いることから、他の原因花粉よりも、後述する花粉–食物アレルギー症候群(PFAS)(*口腔アレルギー症候群(OAS)ともいわれる。通称で果物アレルギーと呼ばれることもある)に注意が必要です。
●地域ごとの飛散量
ヨモギ花粉は全国で9月に多く飛びます。特に東北、関東で飛散量が多いようです。
(3)カナムグラ
●特徴
繁殖力が強い雑草で、茎にたくさんトゲがあり、他の植物や電柱などにからみながら成長していきます。道端や荒地などの日当たりの良い場所に生育します。日本全国に生えていますが、関東を中心に9月に多く飛散します。
●地域ごとの飛散量
カナムグラ花粉は関東で9月、10月に多く飛散します。東北でも9月にやや多く飛散します。
(4)イネ科
●特徴
ススキ
カモガヤ・オオアワガエリ・ネズミホソムギ
イネ科花粉の飛散はピークが2回あり、1回目は5月~6月のイネの田植えのシーズン、2回目が8月~9月のイネの刈り入れのシーズンの頃と言われています。
花粉症の原因となるイネ科の植物はたくさんあります。気候や地域差はありますが、カモガヤは5~7月、ハルガヤは4~7月、ギョウギシバは6~8月、オオアワガエリは5月~8月、アシやススキは8月~9月に花粉が多く飛散しています。
芝生にもイネ科の雑草は含まれており、欧州ではイネ科の花粉症が最もポピュラーです。
●地域ごとの飛散量
イネ科花粉は全国的に9月に2回目の飛散ピークがきます。特に東北、関東で飛散がやや多いようです。
2.9月、10月の地域別飛散状況
次に、地域別に花粉飛散状況を確認していきましょう。
■北海道地域
北海道では、例年9月、10月には花粉症の原因となる花粉は飛んでいません。
■東北地域
東北では、9月にブタクサ、ヨモギ、カナムグラとも飛散ピークになります。イネ科も8月から継続して飛んでいます。
■関東地域
関東では、9月そして10月と、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラが飛散ピークです。イネ科も夏から飛散ピークが続きます。「狂い咲き」ともいわれますが、スギ花粉が少量飛ぶこともあります。
■東海地域
東海では、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科と飛んでいますが、量は少なめです。
■関西地域
関西は、関東より量はやや少ないもののブタクサ、ヨモギ、カナムグラが飛散ピークです。イネ科も8月から継続して飛散しています。
■九州地域
九州地域でも、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科が9月に飛散ピークとなります。
3.9月の原因花粉は多種
9月は花粉症の原因となるブタクサ、ヨモギ、カナムグラの花粉が、飛散量の差はあるとはいえ、どの地域もピークを迎えます。イネ科花粉もこの時期が2回目のピーク。従って、どの植物が自分のアレルギーの原因なのかをつきとめるのが困難です。
すべて症状は鼻水、鼻づまり、皮膚や目のかゆみといった一般的な花粉症の症状です。どの植物の花粉が原因でアレルギー症状が起きているかを確認したい場合にはアレルギー検査が必要になります。
アレルギー検査の概要や費用については、こすぎ耳鼻咽喉科クリニックの金井憲一先生がわかりやすく解説してくれていますので、こちらをご覧ください。
アレルギー検査で鼻水の原因を突き止める!種類や費用、子ども用は?~こすぎ耳鼻咽喉科クリニック・金井憲一院長がやさしく解説
4.対策方法は?
秋の花粉症の予防や治療方法は、基本的にスギやヒノキの花粉症対策と同じです。秋の花粉は草の花粉なので、木の花粉のように遠くまで飛びません。したがって草むらに近寄らないのが一番の予防策です。しかし、この時期は遠足、運動会など外に出る機会も多くあります。その場合にはマスクや眼鏡を装着する、外出から戻ったら手洗いなどをして花粉を払う、抗ヒスタミン薬などの花粉症の薬を服用する、などの対策をしっかり行ってください。
●秋の花粉症予防のコツ
♦草むらに近寄らない。
♦マスクを着ける。
♦目元カバーがついたメガネを着けて花粉が目に入るのを防ぐ。
♦手洗い、うがい、目洗いを行う。
♦症状が起こったら早めに抗ヒスタミン薬や目薬などを使用する(初期療法)
●治療薬のおすすめ
病院に行くと、医師があなたの症状に合った薬を処方してくれます。しかし、忙しくて時間がないときにはドラッグストアで買える市販薬を上手に活用したいですね。
花粉症向けの処方薬にはどんな種類があるのか、また同じタイプの市販薬はあるのかを、以下の記事にまとめましたので、参考にしてください。
花粉症処方薬の効き目と眠気の比較や同じタイプの市販薬の有無~アレグラ、タリオン、ザイザル、デザレックス、ビラノアなど
5.花粉食物アレルギーにも注意
「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」とは、花粉症の人が果物、野菜、ナッツなどを食べた時に、口の中や唇の違和感やしびれ、顔面の腫れ、呼吸困難などが出現する症状のことをいいます。ラテックスを含んだゴムでも同様の症状を起こすので、「ラテックス・フルーツ症候群」とも呼ばれています。「果物アレルギー」「口腔アレルギー症候群」ともいいます。
花粉症の原因となる花粉アレルゲンのタンパク質と特定の食べ物のタンパク質が似ているため、体の免疫が間違って反応することが原因です。これを「交差反応」といいます。
PFASはひどいときにはアナフィラキシーショック(*呼吸困難、血圧低下、意識喪失などのショック状態)を起こすことがありますので、変だなと思ったときは早めに医師に相談してください。
ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科の花粉と交差反応する可能性がある代表的な食べ物は以下のとおりです。
●ブタクサ:
メロン、スイカ、バナナ、ズッキーニ、セロリ
●ヨモギ:
セロリ、ニンジン、マンゴー、スパイス
●カナムグラ:
メロン、スイカ、セロリ、ニンジン
●イネ科:
メロン、スイカ、ミカン、キウイ、ピーナッツ、トマト、ポテト
●日本のスギ・ヒノキ:
トマト
●シラカバ:
リンゴ、モモ、洋ナシ、さくらんぼ、キウイ、マンゴー、あんず、ヘーゼルナッツ、セロリ、ニンジン
●プラタナス:
リンゴ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、レタス、とうもろこし
6.秋の花粉飛散情報はないの?
花粉飛散情報はスギやヒノキのシーズンである2月から5月の”季節もの”であることがほとんどです。
「花粉症クエスト」では、埼玉大学と共同で、東京都内の花粉飛散情報を毎日更新しています。秋には、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科、スギの花粉を中心に観測しています。この都会の住宅街の花粉飛散状況をもとに、あなたのお住まいの花粉飛散状況の参考にしてください。
➡『東京都内の花粉飛散情報 by 埼玉大学』コーナーはこちら>
7.ダニアレルギーの可能性も
夏に繁殖したダニが秋になると死骸やフンとして大量に残留しています。実はダニアレルギーの原因物質は細かくなった死骸やフンに多く含まれています。従って、秋はダニアレルギーによる鼻水やくしゃみなどの症状が出やすい。外にいるときよりも、家や学校など室内で花粉症に似た鼻水などの症状が出る場合には、ダニアレルギーも疑ってみてください。不確かなときは、アレルギー検査を早めに行いましょう。
ダニやペットなどの室内アレルゲンの特徴や対策法については、こちらをご覧ください。
ダニ、ペット、カビ、虫など室内アレルゲンの特徴や対策法は?~相模原病院・谷口先生に聞く
8.まとめ
9月はどの地域でも秋の花粉飛散がピークとなるときです。スギ、ヒノキなど木の花粉に比べて、ブタクサやイネ科などの草の花粉は遠くに飛ばないので、草むらに近寄らないことが最大の予防になります。また、秋の季節は花粉症の原因となる花粉が複数飛んでいるため、どれが原因植物なのか特定しにくいのが特徴。また口腔アレルギーにも注意が必要です。
スギ花粉と比べて社会的認知が低い秋の花粉症ですが、予防を心掛けたり、病院に行ってアレルギー検査や診療をしてもらうなど、早めの対策を行いましょう。
➡人気の「アレグラFX」と同じ成分で価格が安め
【第2類医薬品】アレルビ 56錠 ※セルフメディケーション税制対象商品
➡花粉症処方薬で定番「アレグラ」の市販薬
【第2類医薬品】アレグラFX 28錠 ※セルフメディケーション税制対象商品
➡ロート自慢の最大濃度がかゆみに効く