花粉症といえば、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが一般的ですが、秋の花粉症で悩む人の中には咳がでたり、喉がイガイガする症状を訴える人が少なくありません。春の花粉症シーズンほど秋の花粉症に対する社会的認知が広まっていないこともわざわいして、咳や喉の症状を風邪と間違えていることもあるようです。
ここでは、秋の花粉症の原因、症状の特徴、風邪との見分け方、治療薬や対処方法などについてくわしくご紹介します。
1.秋の原因花粉の種類とピーク
秋の花粉症の原因は主に、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ、そしてイネ科の花粉です。地域によって差はありますが、9月から10月にかけて花粉飛散がピークを迎えます。イネ科の花粉は年に2回ピークがあり、1回目が5~6月、2回目が8~9月といわれています。
ブタクサ(埼玉大学提供)
7月~10月頃に黄色い花をつける。ブタクサとオオブタクサがある。
ヨモギ
日本全国に自生。よもぎ餅やお灸の艾(もぐさ)にも使われる。
カナムグラ
道端や荒地などの日当たりの良い場所に自生する。繁殖力旺盛。
カモガヤ
イネ科花粉症で一番多い。道路わき、公園、河川敷に自生し、牧草としても栽培される。5月、6月に花粉が飛ぶ
ススキ
イネ科アレルギーの原因のひとつ。秋に花粉が飛ぶ。
2.秋の花粉症の特徴
秋の花粉症の特徴は、
・原因となる花粉の種類が多い
・ブタクサ花粉の表面はデコボコしていて、砕けて細かくなりやすい
・スギ花粉と比べて秋の原因花粉のサイズが小さい
ということです。
スギ花粉は日本では花粉症の代名詞であり、スギ花粉のシーズンに花粉症に似た症状が起これば自分は花粉症だと気づきやすいですが、秋の花粉症は原因花粉がひとつでないことや、社会的な認知がスギ花粉症ほど広まっていないため、自分が花粉症であることに気づかないことも少なくありません。
また、秋の原因花粉の大きさがスギ花粉と比べて小さく、特にブタクサ花粉は表面がデコボコしており砕けて細かくなりやすいことからから、花粉が鼻の粘膜でブロックされずに口や喉まで入り込んで炎症を起こし、咳やのどのイガイガを発症することがあります。それが風邪の症状と似ているため、自分が風邪をひいていると間違えてしまうこともあります。
オオブタクサ花粉(埼玉大学提供)
相模原病院HPより引用
それでは間違えやすい秋の花粉症と風邪の症状の見分け方をご紹介しましょう。
3.秋の花粉症と風邪の症状の見分け方
■目のかゆみで見分ける
•目のかゆみがある⇒花粉症
•目のかゆみがない⇒風邪
風邪の場合、目がかゆかったりヒリヒリすることはありません。花粉症でも目のかゆみなどの症状がないこともありますが、目のかゆみがあるときは花粉症と疑う方がいいでしょう。
■鼻水のタイプで見分ける
•透明でサラサラな鼻水⇒花粉症
•黄色味がかった粘り気のある鼻水⇒風邪
花粉症の鼻水は涙と成分がほとんど同じであるため、無色で粘り気のないサラサラとした鼻水、いわゆる「水っぱな」で、水のような鼻水が止めどなく流れ出て、いくらかんでも次から次へと鼻水が出てきます。
一方、風邪の鼻水は白~やや黄色い色でねっとりと粘土があるものになります。風邪の鼻水には細菌やウイルスを退治した白血球が混じっているからです。
■くしゃみの頻度で見分ける
•1日に何度も出る⇒花粉症
•頻度はさほど高くない⇒風邪
一般的に風邪の場合にはくしゃみが出ても頻度は高くありません。それに対して花粉症の場合には1日に何度もくしゃみが出ます。厚生労働省のガイドブック『適切な花粉症治療のために』によると1日のくしゃみの回数が21回以上の人は花粉症の重症度レベルで最重症度とされています。
■熱で見分ける
•平熱〜微熱⇒花粉症
•微熱〜高熱⇒風邪
花粉症では高熱が出ることはほとんどなく、熱が出る場合でも微熱レベルです。
■咳のタイプで見分ける
•「コホン」という乾いた軽いタイプ⇒花粉症または風邪
•「ゴホン」という痰(たん)が絡んだような重いタイプ⇒風邪
秋の花粉症では咳や喉のイガイガが起こることもあります。
「コホン」と乾いたタイプの咳は、気道内に侵入した異物や、気道内の炎症によって生じた、痰(たん)などの刺激によって起こります。花粉症が原因の咳も一般的にこのタイプになります。
「ゴホン」という痰(たん)が絡んだようなタイプの咳は、ウイルスなどを絡めとるために気道粘膜から過剰に出てくる痰を身体の外に追い出そうとているもので、風邪の症状であったり、場合によっては気管支炎や肺炎の可能性もあります。
咳がおさまらないときには早めに病院で受診してください。
➡秋はダニアレルギーにも注意!秋の花粉症との見分け方は?
4.咳が出るときの花粉症の市販薬は?
花粉症が原因の咳には、花粉によるアレルギー反応を抑える成分が含まれる咳止め液が役立ちます。また、鼻炎などのアレルギー症状を抑える内服薬も効果的です。
■アレルギー症状を抑える咳止め液
市販の咳止め液の中で花粉症の咳を抑える効果を期待できるものは、気管支の収縮やアレルギー症状を和らげる抗ヒスタミン薬が入っているものです。
以下の4つの咳止め液の中にはどれにも抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンマレイン酸塩が配合されており、花粉症などのアレルギーが原因となっている咳を鎮静する効果があります。ただし、この薬を服用するときは、抗ヒスタミン剤を含有する内服薬等などを同時に服用しないでください。またこれらの咳止め液を飲むと眠気があらわれることがあるので、車などの乗物や機械類の運転操作は避けるようにしてください。
どれもインターネット通販で購入できます。
- ・15歳以上の大人で1日最大6回、計30mlまで服用可。(4時間以上間隔をあけて服用)
- ・30mlの中にクロルフェニラミンマレイン酸塩が12mg含まれています。
- ・鎮咳作用のあるソヨウを配合して咳を鎮める効果を高めています。
♦新ブロン液エース
- ・15歳以上の大人で1日最大6回、計60mlまで服用可。(4時間以上間隔をあけて服用)
- ・60mlの中にクロルフェニラミンマレイン酸塩が12mg含まれています。
- ・爽やかな服用感のメントールが配合されたシロップ剤です。
♦ジキニン液D
- ・15歳以上の大人で1日最大6回、計60mlまで服用可。(4時間以上間隔をあけて服用)
- ・60mlの中にクロルフェニラミンマレイン酸塩が6mg含まれています。
- ・鎮咳、去痰に定評のあるシャゼンソウエキスやクレゾールスルホン酸カリウムも配合されています。
♦アネトンせき止め液
- ・15歳以上の大人で1日最大6回、計60mlまで服用可。(4時間以上間隔をあけて服用)
- ・60mlの中にクロルフェニラミンマレイン酸塩が12mg含まれています。
- ・さわやかなレモンティー風味の液剤です。
■アレルギー症状を抑える内服薬
♦アレグラ
「アレグラFX」は抗ヒスタミン成分のフェキソフェナジン塩酸塩が配合されています。フェキソフェナジン塩酸塩はアレルギーが発症する原因となるヒスタミンの刺激を受け取るレセプター(受容体)の働きを抑えることで、鼻炎などの症状を緩和します。1日2回朝と晩の服用で効果が1日中持続します。
アレグラFXの特徴は眠気の副作用が少ないことで、薬に添付されている説明書ににも車の運転や機械の操作に関する注意書きがありません。
インターネット通販で購入できます。
「アレジオン20」には処方薬と同量の抗ヒスタミン成分であるエピナスチン塩酸塩が含まれています。くしゃみ、鼻水などに強い効き目を発揮する一方で眠くなりにくい特徴もあります。アレグラFXと比較すると、効き目が強いのはアレジオン20、眠くなりにくいのはアレグラFXと言われています。1日1回の服用で1日中効果が持続します。
インターネット通販で購入できます。
♦クラリチンEX
2020年1月16日に、要指導医薬品から第一類医薬品に移行しました。その結果、薬剤師さんの確認の元、ネットなどの通信販売でも購入できるようになりました。
その他おすすめの内服薬については、以下の記事をご参考にしてください。
5.おわりに ~ 就寝時の咳の対処法
秋の花粉症の特徴のひとつは、咳や喉のイガイガが起こりやすいことです。
咳は喉に付着した異物を排出するための体の防御反応です。むやみに咳を止めない方がいい場合もあるので、咳が長期的に続く場合には早めに病院で診察を受けてください。
また、寝ているときに咳が出ることがよくありますが、寝ているときの咳の対処法として、以下のことを覚えておくと役に立ちますよ。
- ・鼻呼吸を努める:口呼吸だと喉が乾燥し喉の炎症が悪化します。すると気道への刺激が強くなり咳が出るという悪循環になるので、鼻呼吸を努めましょう。
- ・マスクを着用する:マスクが加湿器の代わりになり、鼻や喉の乾燥を防ぎます。
- ・横向きで寝る:横向きで寝ると気道が広がり咳の防止になります。
➡風邪薬で花粉症の代用はOK?併用は?