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【花粉米】スギ花粉米や遺伝子組換えカイコ等を早期に実用化するための検討会開催

第8回農業と生物機能の高度活用による新価値創造に関する研究会

7月25日、筑波産学連携支援センターにおいて、第8回「農業と生物機能の高度活用による新価値創造に関する研究会」が開催された。
この研究会は、生物機能を高度に活用して創出されたプロダクトが早期に社会で実用化されるための環境整備や施策について検討し、提言としてまとめることを目的とし、スギ花粉米や遺伝子組換えカイコなどの具体的事例をふまえた討議を行っている。

研究会の座長は高田史男氏(北里大学大学院医療系研究科教授)。委員には学識経験者、産業界有識者、市民団体代表などが入っている。事務局農林水産省と経済産業省が共同で運営し、関連する省庁として厚生労働省や内閣府なども出席している。

第1回の検討会は2016年2月23日に開催された。今回の検討会で8回目となり、最終的な提言のとりまとめに向けて委員の間で提言内容の検討がなされた。

現状の提言内容案は以下の9つから構成されている。

提言1 生物機能の高度活用による新価値創造に関する政策の策定と推進

提言2 バイオテクノロジー利用に関する国民理解の推進

提言3 オープンイノベーションの推進

提言4 遺伝子組換え等に関するワンストップ窓口・情報共有サイトの設置・運営

提言5 ゲノム編集に関するルールの明確化

提言6 バイオテクノロジー農作物の実用化促進のための環境整備

提言7 遺伝子組換えカイコによる医薬品、高機能シルク等の生産による新産業創出

提言8 バイオ分野の民間研究開発投資支援、バイオベンチャー企業支援

提言9 人材育成

討議の中では、提言2で述べられている遺伝子組換えやゲノム編集などのバイオテクノロジーに関して国民の理解促進をはかるためには、今回の検討会で具体的事例としてあがっているスギ花粉米や遺伝子組換えカイコのような消費者がメリットを実感できる「モノ」を示しながら段階的に社会受容をはかるべきだという意見が出された。

また提言9の人材育成という点では、教える側の人材が不足している実状をふまえて、産学連携で教育者を充実させる施策の検討を盛り込むべきだという指摘や、「ゼロリスク信仰」に対して科学的にアプローチをするには、生物学やバイオ産業に係る人材の必須教養として統計学の習得を推進すべきであるという意見があった。

検討会の終了後、委員の一人である市川まりこ氏(食のコミュニケーション円卓会議代表、以下円卓会議)に話を聞いた。
円卓会議は食の問題に取り組む市民団体のひとつ。市民の立場として国民病といわれる花粉症の対策にスギ花粉米を食品として利用できることを希望している。そのためには農林水産物が医薬品やサプリメントとは異なる手法で健康増進効果を評価できる新しいしくみを早期に確立すべきであると市川氏は主張する。

円卓会議は昨年の「規制改革ホットライン」にも「スギ花粉米をお米として食べられる道を拓いてほしい」という趣旨の提案を提出している。それに対して最近、内閣府規制改革推進室よりヒアリングを受け、スギ花粉米を食品として要望する理由などを説明したそうだ。

次回の研究会は9月頃を予定しており、そこで提言内容を最終的にとりまとめ、秋には提言を発表する予定だ。

当研究会としてはこの提言が農林水産省、経済産業省、内閣府、文部科学省、厚生労働省等において施策の立案、推進に反映されるとともに、総合科学技術・イノベーション会議(議長:内閣総理大臣)におけるバイオに関する戦略の検討の参考になることを期待している。