【花粉米】知っておきたい!花粉症対策に期待の花粉米のすべて②「遺伝子組換え技術を知る」(Part 1)

第1部では「花粉米」が花粉症対策に期待されるその理由を理解するために「免疫のしくみ」や「免疫療法」の基本についてみてきました。第2部では花粉米ができる上で欠かせない技術「遺伝子組換え」についてお伝えしていきたいと思います。

*第1部「免疫のしくみと免疫療法」(Part 1)(Part 2)はここをクリックしてください。

『知っておきたい!花粉症対策に期待が高まる花粉米のすべて』

【シリーズ目次】

第1部「免疫のしくみと免疫療法」Part 1    Part 2

第2部「遺伝子組換え技術を知る」Part 1    Part 2

第3部「お米のすぐれた機能」Part 1  Part 2

第4部「スギ花粉米ができるまで」Part 1  Part 2

第5部 「国民病のスギ花粉症対策に日本の農家が役立つことを夢見て」【インタビュー】Part 1  Part 2

第2部「遺伝子組換え技術を知る」

目次

1.遺伝子組換え技術とは

2.遺伝子組換え技術の歴史

3.遺伝子とは何か

4.どうやって農作物の遺伝子を組換えるのか

5.遺伝子組換えでできた農作物の種類

6.世界と日本の遺伝子組換え作物の現状

7.遺伝子組換え食品とは

8.遺伝子組換え食品の安全性と反対意見

9.まとめ

*1から5までが(Part 1)に、6から9までが(Part 2)の記事に掲載されます。

1.遺伝子組換え技術とは

遺伝子組換え技術人為的に他の生物から目的となる遺伝子を取り出して別の生物に導入することで、生物に新しい性質を付与する技術です。

現在では医薬品の開発、農作物の品種改良、新たな機能性をもつカイコなどの昆虫の開発、食品や飼料への添加物の製造など幅広く利用されています。

2.遺伝子組換え技術の歴史

遺伝子組換え技術の歴史を少し振り返ってみましょう。

遺伝子組換え技術は、1970年代の初めに大腸菌の遺伝子に別の菌を埋め込むことに成功すると、そこから大きく発展していきました。1977年にはアメリカで遺伝子組換え大腸菌を用いて医薬品のインスリンを作ることに成功。80年代には植物への応用が始まります。1985年には除草剤に負けない植物、86年には害虫に抵抗力のあるタバコが開発されました。

研究開発レベルでは遺伝子組換えの成功事例が積み上げられていましたが、他方その技術の安全性や環境への影響について主にOECD(経済協力開発機構)で議論が重ねれらていました。そして1993年にOECDが現代のバイオテクノロジーを活用した農作物の安全性の考え方と原則を提示したことで、商用化が始まりました。1994年には遺伝子組換え技術で作られたフレーバーセーバー・トマト(日持ちの良いトマト)が米国ではじめて認可され店頭に並びましたが、あまり人気にはならなかったようです。翌年1995年にアメリカで遺伝子組換え技術で作られた除草剤耐性ダイズが市場に出ました。日本では1996年に遺伝子組換え作物4種7品目の安全性が確認され、それ以降海外からの遺伝子組換え作物の輸入や国内での生産に対する取組みが本格化していきます。遺伝子組換え作物が本格化してから20年以上の年月がたっているわけです。

*バイオ植物の歴史を1万年前のイネ作開始から年表形式でまとめている「食物バイオ年表」(バイテク情報普及会)があります。興味のある方はこちらをクリックしてください。

3.遺伝子とは何か

遺伝子組換えの「遺伝子」について、多くの人がすでにご存知かと思いますが、簡単におさらいしておきましょう。

私たちの体は、約60兆個の「細胞」からできているといわれています。
「細胞」の1つ1つの中には、「核」があり、その「核」の中には、46本の「染色体」があります。
46本の「染色体」の半分の23本は父親から、後の半分の23本は母親から受け継いだものです。
1つ1つの「染色体」をほどいていくと、ひも状のらせんの構造をした「DNA」が現れます。
「DNA」のひもの部分は「糖」と「リン酸」という物質で、ひもを橋渡しする物質は「塩基」で出来ています。
「塩基」は、『A(アデニン)・G(グアニン)・C(シトシン)・T(チミン)』という塩基物質で出来ていて、常に「G・C」「T・A」のペアで並んでいます。
この「塩基」の並び順が「遺伝情報」です。
「遺伝子」とは、「遺伝情報」の1つの単位です。
人間だけでなく、動物、植物、微生物も同様に「遺伝子」を持っています。

DNAのイメージ

「ゲノム」という言葉もよく耳にしますが、ゲノムも遺伝子と同様にDNAでできています。ゲノムは生物の細胞に含まれる全てのDNAのこと、またはそのDNAの塩基配列できまる全ての遺伝情報のことをさします。

4.どうやって農作物の遺伝子を組換えるのか

農作物を遺伝子組換えする手順を説明します。

STEP 1

ある生物から目的とする有用な遺伝子をみつけて取り出します。

STEP 2

改良しようとする農作物の複数の細胞(カルス)の核に取り出した有用な遺伝子を導入します。

STEP 3

導入したものの中から目的の遺伝子が確実に導入されている細胞だけを選び出して植物体を再生させます。

STEP 4

できあがった遺伝子組換え農作物から目的とした形質がきちんと発現しているものを選びます。

STEP 5

選抜された遺伝子組換え農作物を交配するなどして、その形質が次世代に安定的に伝わるか確認します。

「STEP 2」の有用な遺伝子を細胞の核に導入する方法としては、主にアグロバクテリウム法パーティグルガン法が利用されています。

アグロバクテリウム法

アグロバクテリウムは細菌の一種で、植物に感染して自分の体内のある遺伝子の領域(プラスミド)をその植物(宿主)に導入して自分が生きてくために必要な養分を作らせます。この能力を活用したのが、「アグロバクテリウム法」です。
アグロバクテリウムのにあるプラスミドと呼ばれる環状のDNAを取り出し、酵素を用いてその一部を取り除き目的の有用遺伝子を代わりに入れそれをアグロバクテリウムの中に戻します。アグロバクテリウムを改良したい植物に感染させて有用遺伝子をその植物の中に導入するわけです。

東工大サイエンステクノより引用 

パーティグルガン法

遺伝子銃ともいわれ、導入したい有用遺伝子を直接細胞に入れる方法です。
金やタングステンの微粒子に取り入れたい有用遺伝子をまぶし、これを高圧ガスで改良したい植物細胞に打ち込みます。

遺伝子組換え以外の方法でも作物の品種を改良する方法があります。その一つが改良したい元の品種に目的の形質をもつ系統と交配させていく交配育種法ですが、完成するのに最低でも10年かかるといわれています。有用な遺伝資源がない場合には放射線照射などにより突然変異を誘発させる方法もあります。

5.遺伝子組換えでできた農作物の種類

実際にどういう遺伝子組換え農作物があるのでしょうか。

主な農作物は作付面積の多い順に、

♦ダイズ

♦トウモロコシ

♦ワタ

♦ナタネ

♦テンサイ

です。これらは除草剤耐性(除草剤に強い)または害虫抵抗性(害虫がつかない)という特性を付与されたものです。
例えばグリホサートという除草剤に強い遺伝子を組み込んだ大豆を栽培しグリホサートを散布すると、雑草は枯れますが大豆は枯れないので、雑草を取るという農家の大変な手間が省かれます。
Btタンパク質という殺虫性タンパク質を形質する遺伝子を組み込んだトウモロコシ虫食いを避けることができ、収量がアップします。殺虫性タンパク質と聞くと不安になるかもしれませんが、これはバシラスチューリンゲンシスというどこにでもいる土壌細菌が持っているもので、この土壌細菌を製剤化した農薬のBt剤は有機農業においても使用が認められおり、これまで中毒などの事故も一例も起こっていません

除草剤耐性や害虫抵抗性以外の遺伝子組換え作物の例としては、ウィルス抵抗性パパイヤがあります。
ハワイでとれる8割のパパイヤがウィルス抵抗性パパイヤの「レインボー」です。

関連記事:夏バテ解消&花粉症予防対策!ハワイ産レインボーパパイヤヨーグルトボウル【食レポ】

第2部の「6 世界と日本の遺伝子組換え作物の現状」から「9 まとめ」まではPart 2に掲載されています。

【参照】

「遺伝子組換え農作物・食品ハンドブック」農研機構・生物機能利用研究部門

遺伝子組換えと環境バイオ

「食物バイオ年表」(バイテク情報普及会)

山形大学 遺伝子組換えとは