【花粉米】知っておきたい!花粉症対策に期待の花粉米のすべて②「遺伝子組換え技術を知る」(Part 2)

花粉症クエストでは、最近花粉症対策で注目を集めている花粉米とは何か数回にわけてひも解いていく連載企画をお届けしています

『知っておきたい!花粉症対策に期待が高まる花粉米のすべて』

【シリーズ目次】

第1部「免疫のしくみと免疫療法」Part 1    Part 2

第2部「遺伝子組換え技術を知る」Part 1    Part 2

第3部「お米のすぐれた機能」Part 1  Part 2

第4部「スギ花粉米ができるまで」Part 1  Part 2

第5部 「国民病のスギ花粉症対策に日本の農家が役立つことを夢見て」【インタビュー】Part 1  Part 2

前回は、第2部「遺伝子組換え技術を知る」(Part 1)お伝えしました。今回はその続きの『Part 2』になります。

第2部「遺伝子組換え技術を知る」

目次

1.遺伝子組換え技術とは

2.遺伝子組換え技術の歴史

3.遺伝子とは何か

4.どうやって農作物の遺伝子を組換えるのか

5.遺伝子組換えでできた農作物の種類

6.世界と日本の遺伝子組換え作物の現状

7.遺伝子組換え食品とは

8.遺伝子組換え食品の安全性と反対意見

9.まとめ

*1から5までが(Part 1)に、6から9までが(Part 2)の記事に掲載されています。

(Part 1)はこちらをクリック

6.世界と日本の遺伝子組換え作物の現状

最初に世界の遺伝子組換え作物の実状を確認してみましょう。

農研機構HPより引用

2016年には世界で約1億8500万ヘクタール日本の国土におきかえると約4.8倍の面積遺伝子組換え作物が作られています。アメリカ、ブラジル、アルゼンチンがトップ3ですが、近年中国などの発展途上国での作付面積が増えています。

特に中国は政府の方針として穀物全般の完全自給を目指しています。現在米国から遺伝子組換えダイズやトウモロコシを大量に輸入していますが、今後は中国国内で遺伝子組換えのダイズやトウモロコシを栽培して穀物自給率を高めると発表していますので、作付面積も増えていくでしょう。

現在、遺伝子組換え作物を栽培している国26か国です。

日本は入っていません。日本は観賞用の遺伝子組換えの「青いカーネーション」は生産していますが、遺伝子組換え作物を商用ベースで栽培していないのです。

しかし、日本は海外から大量のトウモロコシ、大豆、ナタネ、ワタを輸入しており、その数量は合計で年間約2,000万トンに及びます。そしてその約8割(約1,600万トン、日本のコメ生産量の約2倍)が遺伝子組換え作物と推定されています。

ちなみに日本のトウモロコシ(スイートコーンを除く)、ナタネ、ワタの自給率は0%ダイズは7%です。ほとんどが海外からの輸入に頼っており、その約8割が遺伝子組換え作物と考えてよさそうです。


農研機構HPより引用

7.遺伝子組換え食品とは

日本では遺伝子組換え作物が商用栽培されておらずそのかわり年間約1,600万トンの遺伝子組換えのトウモロコシやダイズ、ナタネ、ワタが輸入されています。輸入された遺伝子組換え作物は食品原料、飼料原料として利用されています。

出典:厚生労働省PDF

私たちがスーパーなどで「遺伝子組換え」という表示の食品を見かけることはありません
それは遺伝子組換え食品の表示制度に理由があります

生産加工過程でDNAやタンパク質が分解されたり除去された加工品や、主な原材料の上位3品目かつ重量比5%以上でない加工品には「遺伝子組換え」の表示が必要ないからです。

例えば油やしょうゆなどは、遺伝子組換えで導入された遺伝子やその遺伝子が作る新たなタンパク質が製造の過程で技術的に検出できない場合には、表示は義務付けられていません

つまり私たちが日常的に口にしている加工食品の中には遺伝子組換え作物が使われていることが多いのです。

これらの食品はすべてカルタヘナ法や厚生労働省の安全性審査を合格したものです。
では次に具体的にどのような方法で安全性が確認されているか見てみましょう。

8.遺伝子組換え食品の安全性と反対意見

1993年にOECDが現代のバイオテクノロジーを活用した農作物の安全性の基本となる指針を出しましたが、同年に生物多様性条約も発効されました。そして2000年生物多様性条約特別締約国会議再開会合において「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書(カルタヘナ議定書)」が採択され、2003年に締結されました。

この議定書を日本で実施するため、2003年6月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」が公布され、2004年2月に施行されました。

それでは日本の遺伝子組換え作物の安全性評価のプロセスを確認してみましょう。

生物多様性影響(環境に対する安全性)、食品としての安全性、飼料としての安全性について、それぞれ科学的な評価を行います。

生物多様性影響評価は農林水産省と環境省が行い、飼料としての安全性評価は農林水産省食品としての安全性評価は厚生労働省が行い、すべてについて問題がないと確認されたものだけが商品化されます。

出典:バイテク情報普及会

カルタヘナ法に則った生物多様性影響の審査を通過した後は、食品であれば厚生労働省が安全性審査を実施しています。具体的にみてみましょう。

出典:厚生労働省

メーカーなどから申請があると、厚生労働省は専門家で構成される食品安全委員会に安全性の評価を依頼し、食品安全委員会は安全性の評価(食品健康影響評価)を行います。最新の科学的知見に基づく評価の結果、その安全性に問題がないと判断した食品を厚生労働省が公表しています。

以上のように国際的な枠組みで決められたカルタヘナ法や食品や飼料に関する国内の法律に従って安全性の確認がなされています。そして日本においても、世界においても遺伝子組換え作物や食品で事故が発生したという報告はこれまでありません科学者の間では遺伝子組換え技術の安全性は通説になっています。

しかし、消費者などの間に反対意見があるのも事実です。

例えば、

♦遺伝子組換え作物が在来種を駆逐するのではないか(生物多様性に悪影響)

農薬の効かない虫や雑草が生まれるのではないか

♦モンサントなどの巨大な多国籍バイオ企業が農業を独占するのではないか

♦遺伝子組換え食品の表示義務が不十分ではないか

といったものです。

これらに対しては以下のように回答することができます。

♦これまで遺伝子組換え作物による生物多様性へ悪影響があったという報告はない

♦農薬が効かない雑草、虫は、栽培する作物が遺伝子組み換え作物か否かに関係なく、栽培する際に同じ農薬を継続的に用いる事が原因で発生。輪作する、何種類かの薬剤をローテーションで使用するといった適切な管理で抑えていく事が大事

♦遺伝子組換え作物を開発しているのは巨大なバイオ企業ばかりでなく、大学や研究機関も行っていて、そのひとつの例がレインボーパパイヤ

♦遺伝子組換え食品の表示にわかりづらいという声を反映して、消費者庁が2017年4月から遺伝子組換え表示制度に関する検討会を開始

9.まとめ

遺伝子組換え技術1970年代から発展しました。今では医薬品の多くが遺伝子組換え技術を利用しています。農作物の分野では商用化されて20年以上たち、日本においてもトウモロコシやダイズなど大量の遺伝子組換え作物が輸入され加工されています。2050年までに人口が90億人に増加すると予測されていますが、遺伝子組換え技術などのバイオテクノロジーの役割はますます増えていくと思われます。

では最後に第2部「遺伝子組換え技術を知る」で出てきたキーワードを整理しておきましょう。

「遺伝子組換え技術」

人為的に他の生物から目的となる遺伝子を取り出して別の生物に導入することで、生物に新しい性質を付与する技術

「除草剤耐性遺伝子組換え作物」

除草剤に強い遺伝子を組み込んだ作物。それを栽培し当該除草剤を散布すると、雑草は枯れるが作物は枯れないので、雑草を取るという農家の大変な手間が省かれる。

「害虫抵抗性遺伝子組換え作物」

殺虫性タンパク質を形質する遺伝子を組み込んだ作物。虫食いを避けることができ、収量がアップする。

「遺伝子組換え食品」

遺伝子組換え作物を用いて製造された食品。日本では遺伝子組換え作物が商用栽培されておらず、そのかわり年間約1,600万トンの遺伝子組換えのトウモロコシやダイズ、ナタネ、ワタが輸入されている。その輸入された遺伝子組換え作物を原料として製造加工された食品など

「カルタヘナ法」

「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」の別称。 遺伝子組換え生物などの取扱いの規制に関する国際的条約「カルタヘナ議定書」の国内での実施に必要な取扱いを定めた法律のことで、2003年6月に成立し2004年2月から施行されている。

第2部では花粉米ができる上で欠かせない技術「遺伝子組換え」についてその内容や安全性などについてお話しました。

次回は第3部「お米のすぐれた機能~花粉米を徹底理解」をお伝えします。

【参照】

「遺伝子組換え農作物・食品ハンドブック」農研機構・生物機能利用研究部門

農研機構 遺伝子組換え情報

バイテク情報普及会

厚生労働省