【花粉米】知っておきたい!花粉症対策に期待の花粉米のすべて④「スギ花粉米ができるまで」(Part 2)

花粉米

花粉症クエストでは、花粉症対策で注目を集めている花粉米とは何かを数回にわけてひも解いていく連載企画をお届けしています。

『知っておきたい!花粉症対策に期待が高まる花粉米のすべて』

【シリーズ目次】

第1部「免疫のしくみと免疫療法」Part 1    Part 2

第2部「遺伝子組換え技術を知る」Part 1    Part 2

第3部「お米のすぐれた機能」Part 1   Part 2

第4部「スギ花粉米ができるまで」Part 1  Part 2

第5部 「国民病のスギ花粉症対策に日本の農家が役立つことを夢見て」【インタビュー】Part 1  Part 2

第1部では免疫について、第2部では遺伝子組換え、そして第3部では遺伝子組換えによるスギ花粉米の免疫療法についてお話しました。第4部ではそのスギ花粉米がどのようにしてできるのかをお伝えしています。今回は第4部『Part 2』をお届けします。

花粉米ができるまで

第4部「スギ花粉米ができるまで」

目次

1.改変型ペプチドとは

2.アグロバクテリウム法で遺伝子組換えイネを作出

3.花粉米の栽培

4.まとめ

1と2が(Part 1)に、3と4が(Part 2)に掲載されてます。

3.花粉米の栽培

第4部 Part 1ではアグロバクテリウム法による遺伝子組換えで花粉米をつくる方法を実際の手順に沿って説明しました。

それでは次に、このような工程でできた花粉米の種子から苗を育て水田に植え替えて稲穂が実るまで生育させる経過を確認していきましょう。

カルタヘナ法に則った栽培育成

花粉米の種子から苗をつくるところまでは、実験室や閉鎖された温室などで作業されます。これを「第二種使用」といい、『遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律』(通称:カルタヘナ法)に則っとって実施されています。

成長した苗を水田に移植(田植え)するには隔離された野外のほ場が必要ですが、移植された遺伝子組換えのイネが他の動植物に影響を与えないように常に注意を払う必要があります。ここれを「カルタヘナ法」に基づく「第一種使用」といいます。

生物多様性影響評価の3つのポイント

♦遺伝子組換え植物が野外植物の生育を阻んで駆逐してしまわないか(競合における優位性)

♦野生の動植物や微生物などが減少・絶滅してしまわないか(有害物質産生性)

♦在来の近縁種が交雑種におきかわってしまわないか(交雑性)

遺伝子組換え 安全性審査

バイテク情報普及会HPより引用

水田での生育状況

それでは次に今年2017年のスギ花粉ペプチド含有米の水田での栽培、生育状況を確認していきます。

◇育苗箱に土を入れゴミを取り除く作業 (ステップ1)

3月21日に隔離ほ場内に花粉米の種子を搬入して栽培を開始。翌22日には、育苗箱に土を入れる作業と、種子に付いている枝等のゴミを取り除く作業等を実施。

花粉米の栽培農研機構HPより引用

◇育苗箱に播種を行い、育苗器による栽培を開始 (ステップ2)

3月27日に隔離ほ場において育苗箱に播種を行い、育苗器による栽培を開始。

花粉米 栽培農研機構HPより引用

◇4月25日、26日に水田への移植(田植え) (ステップ3)

4月25日、26日水田における栽培を開始。

花粉米 栽培

農研機構HPより引用

◇5月23日現在の生育状況 (ステップ4)

花粉米 栽培

農研機構HPより引用

◇モニタリング用モチ品種イネを隔離ほ場の周囲に配置 (ステップ5)

6月19日に花粉飛散による交雑を調査するモニタリング用モチ品種イネを隔離ほ場の周囲に配置。

花粉米 栽培

農研機構HPより引用

◇6月21日現在の生育状況 (ステップ6)

6月21日の生育状況 (田植えから56日-57日経過)

花粉米 栽培農研機構HPより引用

◇6月30日の生育状況 (ステップ7)

6月22日に出穂を開始。6月30日の生育状況(田植えから65日-66日経過 開花の様子)

花粉米 栽培

農研機構HPより引用

以上のように2017年のスギ花粉ペプチド含有米のイネは順調に育っています。8月上旬には刈り入れが予定されていますが、ここでは昨年2016年のスギ花粉ポリペプチド含有米の収穫の様子をみておきましょう。

◇2016年9月27日スギ花粉ポリペプチド含有米収穫 (ステップ8)

2016年6月1日に田植えを行い栽培してきたスギ花粉ポリペプチド含有米を9月27日に収穫。

花粉米 栽培

花粉米 栽培

農研機構HPより引用

4. まとめ

第4部では一連の花粉米をつくる方法、工程を確認してきました。

このようにしてできた花粉米を私たちが直ちに手にすることができるかというと、そうではありません。現在はあくまで研究開発段階のものなのです。

花粉米を食品や医薬品として実用化・製品化するには、食品衛生法や医薬品医療機器法に則って安全性評価などが必要です。

遺伝子組換え食品の安全性評価
花粉米 安全性評価

バイテク情報普及会HPより引用

 
つまり、私たちが花粉米を製品として利用できるためには、日本ではまだ行われたことのない遺伝子組換え作物の実用化栽培のルール作り(*1)、食品や医薬品としての安全性や有効性の評価など、未知の領域、クリアすべきステップが残っているのです。

そこで次回第5部では、花粉米の開発を担ってきたキーマンに花粉米の研究開発の現状やこれからの展望、そして花粉米にかける想いなどを伺うことにしましょう。

(*1)鑑賞用の青いバラはすでに実用化栽培されています。

【参照】

「アグロバクテリウムによる遺伝子組換えイネの作出」農研機構 土岐精一博士より提供

農研機構 遺伝子組換え関連情報