【花粉米】知っておきたい!花粉症対策に期待の花粉米のすべて①「免疫のしくみと免疫療法」(Part 1)

最近メディアで多く取り上げられ、花粉症対策に注目「花粉米」

花粉が入っているごはん
お米を食べるだけで花粉症が治る
ざっくりとこんな理解をしている人が多いのではないでしょうか。
お米を食べるだけで花粉症が治るだったら早く試してみたい
という期待の声がある一方、
バイオテクノロジーのお米でしょ。なんだか気持ち悪い
不安に感じている人がいるのも事実です。
そこで、花粉症クエストでは花粉米とは何か」を数回にわけてひも解いていく連載企画をお届けすることにしました。

みなさんの理解の一助になれば幸いです。

「知っておきたい!花粉症対策に期待が高まる花粉米のすべて」

【シリーズ目次】

第1部「免疫のしくみと免疫療法」Part 1    Part 2

第2部「遺伝子組換え技術を知る」Part 1    Part 2

第3部「お米のすぐれた機能」Part 1  Part 2

第4部「スギ花粉米ができるまで」Part 1  Part 2

第5部 「国民病のスギ花粉症対策に日本の農家が役立つことを夢見て」【インタビュー】Part 1  Part 2

花粉米とは何かを理解するためには「免疫のしくみ」「遺伝子組換え技術」を知ることが基本になります。
シリーズの最初の2回で2つの基本を押さえておきましょう。この2つを知ることは、花粉症対策の理解が深まるだけでなく、体のはたらき、アレルギーのこと、食の安全のこともわかるようになるので、いろいろな場面で役に立つはずです。
第3話からは具体的に花粉米についていろいろな角度から掘り下げていきます。シリーズの最後には花粉米の開発を手掛けたキーマンにお話を聞く予定でいます。どうぞお楽しみに。

では早速、第1話「免疫のしくみと免疫療法」から始めていきましょう。

第1部 目次

1 「免疫」の意味

2 体を守る3つの防御壁

3 免疫のしくみ

4 花粉症はなぜ発生するのか

5 感作(かんさ)とアレルギー反応

6 免疫療法とは

7 アレルゲン免疫療法(減感作療法)

8 スギ花粉症向けのアレルゲン免疫療法(減感作療法)

9 まとめ

*1から5までが(Part 1)に、6から9までが(Part 2)の記事に掲載されます。

1 「免疫」の意味

最初に「免疫」の日本語の意味を確認しましょう。
「疫」という漢字は「疫病神(やくびょうがみ)」という言葉で使われるように悪性のはやりやまい流行病伝染病のことを指しています。
「免」拘束を解くとか、害をうけないですむ、といった意味で使われます。
この二つの漢字を組み合わせた「免疫」とは、病気からまぬがれること、また病気からまぬがれるためのしくみのことをさしています。

実際には、一度掛かかった病気には2度目はかからない、あるいはかかったとしても軽症ですむという意味で使われます。

体の外から入ってくる細菌やウィルス、異物、または変質した自己細胞(がん細胞など)を攻撃・殺傷・排除して、自分の体を守るはたらきが「免疫」なのです。
余談ですが、「彼女は男性の免疫がない」という時は「彼女は男性とつきあったことがないから男性に慣れていない」というように使うこともありますね。

2 体を守る3つの防御壁

体を守るしくみはどのようなものでしょうか、少し詳しくみてみましょう。

体は外部に存在するウイルスや細菌、異物の感染による発病を3段階の防御壁を用いて防いでいます。

第一の壁:皮膚や粘膜といった物理的な防御壁

皮膚や粘膜の働きにより、細菌やウイルスなどの病原体、アレルギーの原因となる花粉、ダニ、ほこり、食物などの異物が体内へ侵入するのを防いでいます。
侵入してきた病原菌や異物抗原と呼ばれ、アレルギーの原因になるものは特にアレルゲンと呼んでいます。

第二の壁:貪食細胞などの「自然免疫」による病原体の排除

第一の壁を乗り越えて病原体や異物が体の中に入ってくると、白血球の一種である貪食細胞〔どんしょくさいぼう〕や補体がこれに立ち向かいます。
貪食細胞は自分の体の細胞とは異なる病原体や異物を丸々飲み込んで、貪食細胞の中にある消化酵素でそれらを分解します。一方、補体は外部から侵入してきた病原体などに取り付き、相手を破壊します。
貪食細胞や補体による免疫は、生まれつき備わっている働きで、病原体や異物がどんな相手でも相手を選ばず攻撃するので、「自然免疫」または「非特異的免疫」と呼ばれています。

第三の壁:「獲得免疫」による病原体の排除

第二の壁をも乗り越えた病原体や異物に対しては、抗体や白血球の一種のT細胞等が働きます。抗体とは免疫が作り出す病原菌や異物に対抗するための物質のことを指します。
抗体は抗体の種類ごとにそれに対応した病原体や異物のみを攻撃します。例えば、Aという細菌が入ってきた時は、細菌Aに対してだけ働く抗体の働きで感染を防ぎます。
これらの抗体はもともと体に備わっていたものではなく、一度その病気になる(病原体に感染する)ことで体の中に生み出されます。よって「獲得免疫」または「特異的免疫」と呼ばれています。
獲得免疫は特定の病原体や異物に対してのみ特殊的に働くもので、自然免疫に比べて、その作用は大変強力です。もしこの”最後の砦”の感染防御に失敗すると、その病気に感染し、発病してしまいます。

イント!

抗体:病原体や異物に対抗する物質

抗原:抗体が標的として攻撃する物質(病原菌や花粉など)

3 免疫のしくみ

第二の壁や第三の壁による防御は免疫が働いている証拠です。では具体的にどのように働いているのか見てみましょう。

STEP 1

抗原(細菌やウイルスなどの病原体や異物)が体内に入って来ると、貪食細胞であるマクロファージがこれを飲み込んで消化すると共に、抗原の一部(タンパク質の断片)をその細胞表面に目印として掲げます。

STEP 2

これをヘルパーT細胞(リンパ球)が目ざとくとらえ、やはりリンパ球の一種のB細胞に、この抗原に対する抗体を作るよう、指令します。

STEP 3

指令を受けたB細胞は形質細胞と呼ばれる抗体産生細胞に変化し、抗体(IgG抗体やIgM抗体)を作り始めます。しかし、最初の感染による刺激でできる形質細胞は数が少なくて、産生される抗体も量的に多くありませんが、B細胞の一部は免疫記憶細胞として体内に長く留まります。2回目に同じ病原体が侵入してきた時、この免疫記憶細胞が刺激され、速やかに形質細胞に変わり、その抗原だけを特異的に攻撃する抗体を大量に産生して、感染(発症)の防御に役立ちます。

4 花粉症はなぜ発生するのか

病原体や異物といった抗原が体に侵入すると免疫によって抗体がつくられ、抗体が抗原を標的として攻撃し発症しないように防御していることがわかりました。
では花粉症をはじめアレルギー症状はなぜ起こるのでしょうか。
それは、本来は無害な物質に対して免疫が過剰に反応してしまうからです。
細菌やウイルスなどの病原体を免疫が攻撃してくれるのであれば問題ありませんが、攻撃する必要のない花粉や卵、牛乳、小麦、ダニ・カビなどを免疫が攻撃し始めるとアレルギー反応が起こります。

免疫は最初よりも2回目以降に抗原が侵入してきた時の方が抗体を沢山つくることができます。抗原に触れる機会が多いほど免疫の反応が大きくなるのです。つまり、スギ花粉症であれば抗原であるスギ花粉に触れる回数が多いほど免疫が大きい反応となります。そして、免疫の反応がある大きさを超えた時に花粉症を発症します。
これは卵アレルギーや小麦アレルギーなどであっても同様です。
アレルギー発症をコップの中の水があふれ出てしまった状態に例えて説明していることもありますね。

それではもう少し詳しくアレルギー反応をみていきましょう。

5 感作(かんさ)とアレルギー反応

一度抗原が体内に侵入した結果、B細胞によって産生された抗体(IgE抗体)は、血液中を流れて皮膚や粘膜にいるマスト細胞と呼ばれる細胞の表面にくっついて待機しています。この状態を「感作」と呼んでいます。
感作が起こることによって、アレルギー反応を発生させるための準備が整っていくことになるのです。

感作されただけではアレルギー反応はおこりません。感作された状態で、再び抗原(アレルゲン)が侵入してマスト細胞上の抗体(IgE抗体)と反応するとマスト細胞から、ヒスタミン、ロイコトリエンが放出されて様々なアレルギー症状をおこします。これが即時型アレルギー反応です。

即時型アレルギーに対して、リンパ球が反応して再度のアレルゲンの侵入で様々な活性化物質や細胞間伝達物質などが放出される遅発型アレルギー反応もあります。
この他にもいくつかのアレルギー反応の経路があることがわかっています。

即時型アレルギー反応の代表的な疾患が、花粉症、気管支喘息、食物やハチ毒でのアナフィラキシーです。遅発型アレルギー反応の代表的な疾患には、接触性皮膚炎があります。

(Part 2に続く)

*第1部の「6 免疫療法とは」から「9 まとめ」まではPart 2に掲載します。Part 2はこちらをクリックしてください

(参照)

日本血液製剤協会

日本アレルギー学会

役に立つ薬の情報~専門薬学 | 薬・薬学・専門薬学・薬理学など

トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ