NPO「花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会」は2018年2月25日に、花粉症の治療や予防に関する正しい知識を啓蒙するための「第5回花粉症市民講座」を実施しました。NPOの事務局長を務める松根彰志先生は、日本医科大学教授として耳鼻咽喉科学の研究に従事するだけでなく、日本医科大学武蔵小杉病院・耳鼻咽喉科部長として治療の最前線でご活躍されています。
松根先生のもとに診療に来るお母さんの相談で多いのが、子どもの鼻水。鼻水は花粉症の代表的な症状でもあることから、松根先生は「子どもの鼻水」をテーマとして第5回花粉症市民講座の中で講演をされました。そのお話の概要をご紹介します。
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目次
1.鼻と鼻水の機能
鼻腔(鼻)は、呼吸の通路であり、空気の中にあるゴミなどをとってクリーニングし、加温加湿を行った上で気管や肺に送り込みます。嗅覚という大切な役割も担っています。
鼻水は時にうっとおしいものですが、鼻の湿度を適正に保ち、ゴミや花粉など外からの侵入物を洗い流すポジティブな役目を果たしています。鼻の表面はピンク色の粘膜で覆われていますが、その粘膜を守るために鼻水が出て、鼻の前や後ろに流れるのです。
2.鼻水の病気の種類
鼻水の病気には副鼻腔炎、いわゆる蓄膿(ちくのう)と、鼻炎があります。
鼻炎の中には、花粉などが原因のアレルギー性鼻炎、細菌やウイルスによる急性鼻炎などがあります。
3.副鼻腔炎と鼻炎の違い
上記画像の青い★印が鼻腔、その周囲にある赤い★印のところが副鼻腔です。鼻腔の炎症を鼻炎、副鼻腔の炎症を副鼻腔炎といいます。
4.鼻炎と副鼻腔炎は合併することがある
鼻炎と副鼻腔炎は別々に起こることもありますが、両方同時に起こることもあります。
どちらの症状でも鼻水がでますが、その性質は異なります。
鼻炎の鼻水はサラサラなタイプですが、副鼻腔炎の鼻水はネバネバしたものが多く、時には黄色や青色が出ることもあります。また副鼻腔炎の場合には頭や頬が痛くなったり、咳や痰が出やすい特徴もあります。
5.アレルギー性鼻炎の種類
アレルギー性鼻炎には、花粉による季節性のものとダニが原因の通年性のものがあります。
季節性の鼻炎の原因となる花粉の種類は国や地域によって異なり、スギ花粉で花粉症になるのは日本だけで、ヨーロッパであればイネ科、アメリカはブタクサが代表的です。一方、ダニは世界共通の通年性アレルギー鼻炎の原因です。
時には花粉症と通年性アレルギー鼻炎が合併していることがあります。通年で鼻水がでるようなお子さんは春の花粉シーズンであっても花粉だけでなくダニも原因として疑ってみる方がいいでしょう。
6.風邪の鼻水との違い
細菌やウイルスに感染し風邪をひくと鼻水がでます。いわゆる”鼻かぜ”ですが、その際には鼻水以外にも、熱が出る、全身がだるい、関節が痛い、喉が痛いといった症状が一緒に起こることがあります。これらはアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎では起こりません。こういう風邪の典型的な症状でアレルギー性鼻炎などと識別してください。
また、鼻水がでる期間も病気の識別の目安になります。
花粉症であれば毎年同じ季節に鼻水が出る、通年性アレルギー性鼻炎であれば1年を通して出る、副鼻腔炎の場合には2か月、3か月程度続きます。風邪のときに鼻水が出るのは季節に関係なく1、2週間程度ですので、これを目安にしてください。
7.鼻の症状は相互に関連する
アレルギー性鼻炎の人はそうでない人と比べてウイルスに感染し急性鼻炎になりやすい傾向があります。
急性鼻炎になると、それを契機として細菌感染して急性副鼻腔炎になる。急性副鼻腔炎が本格的になると後鼻漏(こうびろう)といって痰(たん)のよく出る症状が起こります。これはもはや慢性の副鼻腔炎で、ドロドロの鼻水がずっと続きます。
このように鼻炎や副鼻腔炎は関連して発症することが多いのです。
8.子どもの症状の特徴
15歳未満の子どもは15歳以上に比べてアレルギー性鼻炎と副鼻腔炎が合併しやすい特徴があります。
その理由のひとつは、子どもの顔の発育状態にあります。大人になると鼻腔と副鼻腔がしっかり発達し区別されていますが、子どものときには鼻腔と副鼻腔が一体化して存在しているからです。すると、アレルギー性鼻炎が鼻全体に波及しやすく副鼻腔炎になりやすいのです。
例えば、感染症による鼻かぜや副鼻腔炎のお子さんが治療によって症状が一旦治まっても、そのあと何度も再発を繰り返すのは、アレルギー性鼻炎が裏にかくれて原因になっている可能性が高い。よって、副鼻腔炎などの治療を行う場合でもアレルギー性鼻炎の薬も一緒に服用し、副鼻腔炎の症状が治まってもアレルギー性鼻炎の治療をしばらく継続して行うと、症状が安定して副鼻腔炎の再発を防ぐことができます。
子どもは鼻水の症状を反復しやすく、それはアレルギー性鼻炎、急性鼻炎、副鼻腔炎が相互に関係していることぜひ覚えておいてください。
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●松根彰志先生のプロフィール
- 1984年 鹿児島大学医学部医学科 卒業
- 1988年 鹿児島大学大学院医学研究科 博士課程 修了
- 1988年~1990年米国ピッツバーグ大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 留学
- 2000年 鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教授 (2007年より大学院准教授)
- 2011年~日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長(臨床教授)
- 2015年~日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授
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