今年のスギやヒノキの花粉飛散量は多い?少ない?どうやって予測は行われているのでしょうか?私たちもその仕組みを理解できれば、毎年の花粉症対策に役立つはずです。
そこで、スギ花粉症が社会問題化して以来、花粉量予測技術の確立に尽力されてきたNPO花粉情報協会の横山敏孝 理事に花粉量予測の仕組みや予測する上での重要ポイントについて、わかりやすく説明していただきました。
横山敏孝 理事
目次
1.花粉が生まれて飛ぶまで
- Q:スギやヒノキの花粉飛散予測はどうやって行われているのでしょうか?
(横山先生)花粉量予測の仕組みを説明する前に、スギやヒノキの生殖サイクルを知っておきましょう。これを頭に入れておくと、後で説明する予測の仕組みが理解しやすくなります。
●スギの生殖サイクル
(横山先生)スギの木は、毎年6月中旬から雄花と雌花を形成し始めて10月末ぐらいにそれらができあがります。雄花の中で発育した花粉も10月中旬から10月下旬にかけて完成します。この頃から気温が低下しますので、年明けまで雄花は休眠状態に入ります。
1月に入って温かい日があると、雄花は休眠から目覚め開花の準備を始めます。そして2月中旬から3月にかけて気温が上昇するとともに、雄花は開花し、中から花粉が飛び始めます。この花粉が風にのって都会にまで到達するので、多くの人が花粉症に悩むわけです。
しかし、花粉の目的は都会に向かって飛ぶことではありません。受粉して種をつくることです。3月に受粉した後、6月初めに受精し種ができ始め、10月頃には成熟します。一方、スギの新しい芽も4月頃には生長を始め、6月中旬には新たにまた雄花と雌花が形成されます。これが一連の流れです。
5月下旬のスギの枝(林野庁「スギ林の雄花調査法」より引用)
●ヒノキの生殖サイクル
(横山先生)ヒノキの場合は、花粉が完成する時期がスギとは異なります。雄花が形成されるのはスギと同じように10月下旬ですが、この時期には雄花の中でヒノキ花粉はまだ完成していません。冬場の休眠時期を超えて3月下旬頃ようやく花粉が完成し、一気に開花して花粉飛散を開始します。従って、スギ花粉に比べて約1ヶ月程度ヒノキの飛散開始が遅くなるのです。
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2:花粉量はこうやって予測する
- Q:花粉ができる流れがわかりました。この流れをふまえて予測を立てるのですね。
・スギ林の花粉量は植林後20~30年で高止まりに
(横山先生)その通りです。まず前提として、基本となるスギやヒノキの花粉生産量は「スギ林、ヒノキ林の面積」と「林齢」で左右されます。
スギでいえば、関東では植栽後20数年、全国的には30年を超えると雄花を大量に生産し始め、その後100年ぐらいまではあまり変わらない量を生産し続けます。つまり、基本となる面積当たりの生産量としては、30年ぐらいで頭打ちになりますので、30年以上のスギ林の面積が分かれば潜在的な花粉量が把握できます。
・夏の気象条件で毎年の花粉量が変化
(横山先生)その上で、毎年の花粉生産量は6月から7月にかけての気象条件で大きく変化します。先ほど説明したように、6月下旬から雄花が形成され始めるのですが、この時期に日射量が多く気温が高めだと雄花ができやすくなり、花粉の生産量も多くなるのです。
・11月に雄花量(花粉量)目視観測
(横山先生)翌年の花粉飛散量予測をするためには、夏の気象条件だけ確認しても不十分です。スギであれば雄花ができあがる11月中旬頃に実際にどの程度できているかを現地調査する必要があります。
具体的には、スギ林の中から無作為に40本を選び雄花の着生状態をAからDの4段階にランク分けし、それに重み付けの点数をかけて雄花指数を導き出します。
また目視観測するスギ林の中にトラップを置いて開花後に落下してくる雄花を補足して生産された雄花の量を測定します。この雄花生産量と、さきほどの雄花指数との関係がこれまでの調査で分かっていますので、雄花指数によって雄花の量が推測できます。花粉は雄花の中にできるので、花粉量も推測することが可能になります。
現在、この雄花調査法を17の自治体で行っており、気象条件と合わせることでより精度の高い花粉量予測が可能になるのです。
11月中旬頃のスギ林の雄花着生状況 目視でA,B,C,Dにランク分けする
(林野庁「スギ林の雄花調査法」より引用)
・飛び始めの時期
(横山先生)1月に入ると雄花は開花の準備を始めます。11月以降に低温を十分受けた雄花は、1~2月に気温が高めだと開花が早まります。関東を例にあげると、一般的にバレンタイデーの頃に花粉が飛散を開始するのですが、1月の気温が高めだとこれが早まるわけです。
・毎日の花粉飛散量
(横山先生)花粉の飛散が開始した後は、その日の気温や風、雨などの気象条件によって花粉飛散量が変動します。雄花の中にある花粉がほぼ全て放出されつくしたら、花粉飛散は終了です。
・花粉の大量飛散の翌年は花粉が少ない
(横山先生)そもそも花粉の目的は種をつくることです。よって、花粉が大量に飛んだ年は、その後多くのスギの木が種をつくる方にエネルギーを割き、雄花をつくる方にエネルギーが回らなくなります。よく花粉が大量に飛んだ年の翌年は花粉飛散量が少ないと言われますが、それはこのようなスギのバイオリズムが背景にあります。
・ヒノキの花粉量予測
(横山先生)これまで説明したのはスギの雄花調査法ですが、ヒノキについても調査法を開発している最中です。
ヒノキの雄花はスギと比べるとサイズが小さめです。また、先ほど説明したように、発育過程がスギと異なるため、3月下旬にならないと離れたところから目視で雄花を判別することができないのです。ところが3月下旬に花粉が完成すると直ちに開花し始めるため、花粉量予測を発表する時にはすでに花粉飛散が開始していた、ということになりかねません。そこでヒノキは離れたところからの目視観察ではなく、1本の木ごとに近づいて雄花の状態を観察する方法を検討しています。すでに手法は確立しつつあるのですが、スギと比べて職人的な技が必要になるため、人の代わりにドローンと画像認識技術を用いた自動判定手法について森林総合研究所(*国立研究開発法人森林研究・整備機構の略称)で研究開発しているところです。
Point! 花粉量予測の要点
- ●夏の気象条件(日照量が多く気温が高めだと雄花(=花粉)が多くできる傾向)
- ●11月頃の雄花の状態(雄花の着生状況を現地調査)
- ●前年の花粉飛散量(花粉飛散量が多いと翌年は花粉量が少なめの傾向)
- ●年明けからの気象条件(飛び始めや飛散開始後の日々の花粉飛散量に影響)
3.花粉量予測から少花粉スギまで
- Q:教えていただいた予測手法はいつ頃し確立たのでしょうか。
(横山先生)私は森林総合研究所(旧林業試験場)で木の種子繁殖に関する研究を長年行っていました。今では信じられないかもしれませんが、花粉症が社会問題化する前は花粉が多く生産できるスギ品種が求められていたんですよ。
ところが、平成になる少し前からスギやヒノキの花粉症が顕在化しました。
スギ林の齢級別面積の推移(横山,2012)
1980年代以降スギ林の総面積の増加はないが、花粉を飛ばす林齢30歳以上のスギ林(黄色、オレンジ、赤)の割合が増えていくのがわかる。
(横山先生)そこで、全国林業改良普及協会が中心となって1987年からスギ花粉動態調査が始まりました。試行錯誤を経て、花粉量予測技術が確立したのは2001年頃です。
一方、雄花の着生状態を観察し花粉量を予測するだけはなく、森林総合研究所では花粉が少ないスギの品種改良を重ねたり、菌類を使ったスギ花粉防止スプレーの開発を行ってきました。花粉情報だけでなくこういった新製品が多く社会で活用されるようになれば、花粉症問題の解決の一助になると考えています。
(林野庁「スギ林の雄花調査法」より引用)
(横山先生)また、昨年はヒノキ花粉が大量飛散しましたが、スギのようにヒノキの雄花量調査を行っていなかったため、あれほど飛散することを予測できませんでした。現在開発中のヒノキの雄花量調査を一刻も早く軌道にのせて、花粉対策に役立つようにしたいと考えています。
Q:横山先生、貴重なお話をありがとうございました!
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