2018年8月6日、農研機構(*国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の通称)は今年度第2回目となる「スギ花粉米の研究を目的とした外部機関への提供について」の説明会を行いました。
その概要をレポートします。
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1.公募は3年目、今年度は2回目
●今年度で3年目の公募
農研機構は、スギ花粉米を早期に実用化することを目指して、研究開発を希望する民間企業や大学、研究機関にスギ花粉米を提供するための公募を行っていますが、2018年度で3年目となります。
初年度と2年目は、東京慈恵会医科大学と大阪はびきの医療センターの2つの医療機関に提供されました。初年度は大塚製薬工場からも応募がありましたが、審査の途中で応募辞退がなされ、提供には至りませんでした。現在、東京慈恵会医科大学と大阪はびきの医療センターは2年間にわたるスギ花粉米(ペプチド含有米)の臨床研究の結果を分析しており、年内を目途に成果の報告がなされる予定です。
➡慈恵医大や大阪はびきの医療センターが行っている臨床研究の内容はこちら
●今年度で2回目の公募
今回開催された説明会は、今年度で2回目のものです。
1回目は4月12日に開催されましたが、現在、審査委員会で応募に対する最終的な検討がなされており、まもなく提供先が発表される予定です。
➡第1回公募の審査結果発表!↓(2018年8月21日)
2.提供条件
●提供する生物材料
今回提供するスギ花粉米の種類は、「スギ花粉ポリペプチド含有米」と「スギ花粉ペプチド含有米」の粉砕物(粒度100μm以下)を予定しています。
応募する外部機関の希望があれば、粉砕物以外に白米やパック米での提供も検討することが可能。ただし、スギ花粉米が遺伝子組み換えのお米であることから、カルタヘナ法に則った取扱いが必要で、また、、玄米での提供は不可能とされています。
スギ花粉ポリペプチド含有米は、花粉症の原因となるスギ花粉アレルゲンコンポーネント「Cry j 1」及び「Cry j 2」の構造を改変して全長を遺伝子組換え技術によってお米の中に発現させたものです。
アミノ酸の並び方が改変されているとはいえ「Cry j 1」「Cry j 2」のエピトープ(身体のT細胞が認識する抗原の特定の構造単位)全部が含まれるため、すべてのスギ花粉症患者に有効性があると期待されています。
なおスギ花粉ポリペプチド含有米の玄米1gあたりにCry j 1、Cry j 2は2mg程度蓄積されています。
一方、スギ花粉ペプチド含有米は、スギ花粉アレルゲンのエピトープのうち、主要な7つを連結したペプチド(7Crpと呼ぶ。ペプチドとは2個以上のアミノ酸が結合したもので、たんぱく質より小さいもの)を遺伝子組換えで発現させたお米です。
7Crpはアレルゲン全長ではなく部分的なものであるため、スギ花粉のIgE抗体との反応性は低く安全性が高い(アレルギーショックなどが起こりにくい)と考えられる一方、患者によって効果が得られない場合もあります。
スギ花粉ペプチド含有米はキアタケと日本晴で生産していますが、キアタケには玄米1gあたりに7Crpが2.5mg程度、日本晴れには0.4g程度が蓄積されています。
➡スギ花粉米の詳しいことはこちら
●新たな審査基準~利益相反
今回新たに加わった公募条件として、利益相反の確認があります。
研究を行う全員が対象になり、利益相反の状況を提出します。この条件が新たに加わった理由は、応募を審査する審査委員会から、応募を公平・公正に検討するにためには必要な情報であると指摘を受けたためと農研機構は説明しています。
3.公募の手続き
提供希望団体は、別紙3(生物材料利用研究開発計画提案書)を、法人(*個人での応募は受け付けていません)であることを証する書類と共に、8月14日(火)(当日消印有効)までに、農研機構 生物機能利用研究部門 遺伝子組換え研究推進室郵送宛に郵送してください。
その後、審査委員会にて審査がなされ、提供先が決定されます。審査結果は農研機構のホームページで公開されます。
公募の詳しいことは農研機構ホームページをご覧ください。
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