病院で処方される花粉症の薬にはいくつかの種類があります。
ここでは、花粉症向けに多く処方される第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬の概要や違いについてご説明します。
(参考:日本医科大学 大久保公裕教授インタビュー、「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」など)
➡目薬を効き目、コンタクト可否、爽快感の有無、妊婦や子ども用などで比較しました↓
市販の花粉症目薬でおすすめはどれ?(効き目の強さ・コンタクト可否・妊婦や子ども用)~アルガード、アルピタット、アレルカットの比較
1.第2世代抗ヒスタミン薬
・第2世代抗ヒスタミン薬とは
花粉症の症状は、身体に侵入した花粉をきっかけに、アレルギーに関係するマスト細胞(*肥満細胞ともいう)からヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が放出され、神経を刺激したり、粘膜が腫れることによって起こります。
花粉症が起こるメカニズム
ヒスタミンは鼻や目の粘膜を刺激し、くしゃみや鼻水、目のかゆみ、涙目の原因になります。花粉を吹き飛ばしたり洗い流して、身体の外に排除しようとする働きです。
ヒスタミンが働くには、粘膜などの細胞にあるH1受容体と結合する必要があります。抗ヒスタミン薬は、H1受容体に先に結合して、ヒスタミンが結合するのを防ぎ、症状を和らげるための薬です。
一方、ヒスタミンは脳内では覚醒、記憶、学習、自発運動などの働きがあります。抗ヒスタミン薬の成分が脳内に浸透し、ヒスタミンの働きが妨害されると、「眠気」やインペアードパフォーマンスと呼ばれる、眠気がなくとも「判断力が低下」したり、「学習能力が低下」する副作用が起こります。
さらに、抗ヒスタミン薬は、脳内や身体の中のアセチルコイン受容体にも結合します。その結果起こるのが、抗コリン作用と呼ばれる「口の渇き」「便秘」などです。
「第1世代」抗ヒスタミン薬に多くあったこれらの副作用を減らすために改善されたのが、「第2世代」抗ヒスタミン薬です。
製品名 | 一般名 | 発売年月 | 後発品 | 市販薬 |
---|---|---|---|---|
アレジオン | エピナスチン | 1994年6月 | 〇 | 〇 |
エバステル | エバスチン | 1996年6月 | 〇 | 〇 |
ジルテック | セチリジン | 1998年9月 | 〇 | 〇 |
タリオン | ベポタスチン | 2000年10月 | 〇 | 〇 |
アレグラ | フェキソフェナジン | 2000年11月 | 〇 | 〇 |
アレロック | オロパタジン | 2001年3月 | 〇 | × |
クラリチン | ロラタジン | 2002年9月 | 〇 | 〇 |
ザイザル | レポセチリジン | 2010年12月 | 〇 | × |
ディレグラ | フェキソフェナジン・プソイドエフェドリン | 2013年2月 | 〇 | × |
ビラノア | ビラスチン | 2016年11月 | × | × |
デザレックス | デスロタラジン | 2016年11月 | × | × |
ルパフィン | ルパタジン | 2017年11月 | × | × |
*2020年6月よりザイザルの後発品が発売。2020年9月よりディレグラの後発品も販売開始。
*2020年12月10日よりタリオンの市販薬「タリオンAR」が販売開始。
*2022年11月29日にディレグラのスイッチOTC市販薬「アレグラFXプレミアム」が承認されましたが、発売日は未定です。(2023年1月2日現在)
・眠気と効き目の比較
花粉症クエスト編集部で、主な第2世代抗ヒスタミン薬の眠気と効き目を比較しました。
第2世代抗ヒスタミン薬は、眠くなりにくいタイプとはされていますが、以下のように自動車運転の禁止や注意が明記されているものがありますので、ご注意ください。
- ●運転禁止:ジルテック、アレロック、ザイザル、ザジテン、アゼプチン、セルテクト、ダレン、レミカット、ゼスラン、ルパフィン、アレサガテープ
- ●運転注意:エバステル、タリオン、アレジオン
- ●注意や禁止記載なし:アレグラ、クラリチン、ディレグラ、ビラノア、デザレックス
第2世代抗ヒスタミン薬の詳しいことは、こちらをご覧ください。
➡処方薬と同じタイプの市販薬を知っているとなにかと便利です↓↓
【2023年版】花粉症処方薬の効き目と眠気の比較や同じタイプの市販薬の有無~アレグラ、ザイザル、アレロック、タリオン、ビラノア、デザレックスなど
➡人気の「アレグラFX」と同じ有効成分で価格が安め!
【第2類医薬品】アレルビ 56錠 ※セルフメディケーション税制対象商品
2.抗ロイコトリエン薬
ロイコトリエンという物質はヒスタミン同様、アレルギー反応によって放出されるものです。(上記の画像 花粉症が起こるメカニズム⑥)
ヒスタミンが花粉が身体に侵入した直後にくしゃみや鼻水を起こすのに対して、ロイコトリエンは少し時間がたってから現れる遅発型の症状の原因です。
ロイコトリエンは血管を拡張させて鼻の粘膜を膨張させます。そこで抗ロイコトリエン薬が鼻の粘膜などにある受容体に結合するのを防ぎ、粘膜の腫れやむくみを抑制するのです。
主に鼻づまりの改善に使用される薬ですが、くしゃみや鼻水にも一定の効果があります。
製品名 | 成分名(薬品名) |
---|---|
シングレア | モンテルカストナトリウム |
キプレス | モンテルカストナトリウム |
オノン | プランルカスト水和物 |
抗ロイコトリエン薬の詳しいことは、こちらをご覧ください。
3.鼻噴霧用ステロイド薬
「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版」で勧められたことにより、病院でよく処方されるようになった鼻噴霧用ステロイド薬。
鼻の症状がひどいときは、粘膜の過敏性が非常に強くなっていて、そこに好酸球などがとりつき、炎症がひどくなるのです。そんな状態を抑えるのがステロイドです。鼻づまりはもちろん、くしゃみ、鼻水にも効果があります。
薬の中に入っているステロイド成分は微量で、患部に直接作用し、血液に入ることはほとんどありません。ですから全身への影響をさほど心配する必要はありません。鼻に噴霧した際のステロイド薬の副作用としては、鼻の刺激感、乾燥感、鼻血がほとんどです。
鼻噴霧用ステロイド薬を使用すると、鼻水やくしゃみには2、3日で効果を感じらることが多いのですが、鼻づまりには1週間程度はかかります。すぐに効果が感じられなくても、継続して噴霧を行ってください。
市販の鼻スプレー薬の中には、血管収縮剤が入っているものがあります。スプレーするとスッと鼻が通る感じがしますが、その効果が短いため、1日に何度も噴霧するようになります。使い続けるとリバウンド現象が起こり、鼻づまりが悪化してしまいます。最近はOTC医薬品(*店頭で買える処方薬と同じ成分の薬)で、血管収縮剤の入っていないステロイド入りの鼻スプレー薬も販売されていますので、よく成分を確認して使用してください。
製品名 | 主成分 |
---|---|
アラミスト | フルチカゾンフランカルボン酸エステル |
エリザス | デキサメタゾンシペシル酸エステル |
ナゾネックス | モメタゾンフランカルボン酸エステル |
リノコート | ベクロメタゾンプロピオン酸エステル |
フルナーゼ | フルチカゾンプロピオン酸エステル |
鼻噴霧用ステロイド薬の詳しいことはこちらをご覧ください。
➡鼻づまりのひどい方にはステロイド入り鼻スプレーが効く
(2023年版)花粉症・鼻アレルギー向け「点鼻ステロイド薬」の違いや特徴~小児には?市販薬は?(アラミスト、ナゾネックス、エリザス、リノコ―ト、フルナーゼ)