花粉症やダニアレルギー、喘息などのアレルギー疾患は低年齢化するだけでなく、長寿社会を背景に高齢者の間でも増加しています。社会全体で拡大するアレルギーに対して、根本的に治すことができる治療法は限られているのが実状です。
そこで、NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会との共同連載『名医が教える!花粉症の治し方』(第2回)では、アレルギーの根治療法である舌下免疫療法とは何かを、日本医科大学武蔵小杉病院の耳鼻咽喉科部長として臨床の最前線にも立つ松根彰志・日本医科大学教授にわかりやすく解説していただきました。
ここでは松根先生のお話の中からPart3として、スギ花粉の次にアレルギーの原因となっているダニのアレルギー性鼻炎向け舌下免疫療法や、アレルギー治療に対するアドバイスをご紹介します。
(Part1はこちら↓をご覧ください)
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目次
1.ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法とは?
アレルギーの原因としてスギ花粉の次に多いのがダニとされています。舌下免疫療法はダニのアレルギー性鼻炎を治したり改善する治療法のひとつです。
Q:ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法はどのようなものですか?
ダニによるアレルギー性鼻炎の原因となる主なダニの種類は、「コナヒョウヒダニ」や「ヤケヒョウヒダニ」です。これらのフンや死がいが原因となりアレルギーを引き起こします。
ダニアレルギー性鼻炎向けの舌下免疫療法の薬は「アシテア」(シオノギ製薬)と「ミティキュア」(鳥居薬品)の2種類があります。どちらも海外企業が製造したものを日本に輸入しています。
アシテア
ミティキュア
アシテアとミティキュアは、同じものではありません。どちらもコナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの抗原成分を50%ずつ含みますが、1錠に含まれる成分の量が異なります。アシテアにはミティキュアよりも多くダニ抗原成分が含まれています。有効性など両者を比較した試験はないのですが、効果や副作用の強さに差異があると考える方がいいかもしれません。
Q:ダニアレルギー性鼻炎向けの舌下免疫療法は何歳から治療ができますか?
適用年齢に下限はありませんが、臨床試験の対象が5歳以上でしたので5歳からが一般的でしょう。
Q:治療の方法や期間は?
錠剤を舌の下に置いて、1分または2分間(*薬により異なる)保持したあと飲み込みます。飲み込んだあとの5分間は、飲食やうがいができません。
この治療を1日1回、毎日自宅で行います。3年から4年は継続してください。
通院は、治療開始直後は2週に1回、安定したら1ヵ月ごとになります。
Q:副作用はありますか?
スギ花粉症向けよりもダニの舌下免疫療法の方が副作用がでる患者さんが多くみられます。
副作用は主に、口の中のかゆみ、違和感、腫れなどです。治療開始して2週~4週目に集中し、その後は改善していきます。
Q:いつから治療開始できますか?
スギ花粉症向け舌下免疫療法はスギ花粉が飛散していない6月から12月頃に治療を開始しなくてはなりませんが、ダニアレルギー向け舌下免疫療法は季節に関係がないので、基本的にはいつでも治療をスタートできます。(スギ花粉症を合併している場合は異なります)
Q:費用はどのぐらいかかりますか?
2015年から保険適用になりましたが、3割負担のケースでは、病院で払う診療費と調剤薬局での薬代の合計で1か月3,500円程度です。
Q:スギ花粉症向けとダニ向けとを併用できますか?
同時に治療を行うことはできます。
副作用が出た場合にどちらが原因かわかるようにするために、最初はスギ花粉治療から初めて、治療に慣れて安定した後にダニ治療をスタートするようにすすめています。ただし、ダニによる症状が明らかに強い場合は、ダニ治療から開始することもあります。
Q:スギ花粉症向けとダニ向けの薬は一緒に投与してもかまいませんか?
もし副作用が出た場合にどちらが原因かを判別しやすくする目的で、薬の投与時間を別々にする方がいいとされていますが、両方の治療開始1か月以降、副作用がなく安定したら投与を一緒に行っても問題ないでしょう。
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2.小児アレルギーには免疫療法をもっと活用して
Q:最後に、スギ花粉症やダニアレルギーの患者さんに松根先生から治療のアドバイスをお願いします。
・子どもはダニアレルギーの免疫療法で他のアレルギーを予防
現在、アレルギー疾患には薬物療法が中心ですが、近い将来、薬物療法と免疫療法が半々ぐらいの割合になっていく可能性があります。
特に子どものアレルギーに、今後はもっと免疫療法が普及していく余地が大きいと思います。理想的には、免疫療法の効果を症例ごとに予測できるようになり、効果が著しく期待できる症例を中心に免疫療法を実施する。その効果が発現するまでの期間や不十分な部分を薬物療法が補完する。こんなイメージです。
子どもの場合、2、3歳までにダニに感作するケースが圧倒的ですが、小さいときにダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法を施しておけば、そのあとスギ花粉症や小児喘息などの別のアレルギーになりにくいとの意見もあります。もし、ダニアレルギーの陽性反応がでている小さいお子さんをお持ちの親御さんで免疫療法をすべきか悩んでいる場合には、一度専門医にご相談いただけたらと思います。
・人に快適な空間はダニにも快適
子どものダニアレルギーが増えている背景は、現代の住宅環境にあります。昔の家は風通しよくできていて、冬になると家の中でも寒かったりしましたが、今の家は一年中暖かく快適です。それはダニにとっても繁殖しやすい環境で、誤解を恐れずに言うと、家の中はダニだらけです。
ダニは夏から秋にピークになると言われていますが、生きているダニの数だけでなく、死骸やフンの量でアレルギーが影響されるので、スギ花粉のように特定の季節だけ対策すればいいというわけにはいきません。普段から室内や寝具などのこまめな清掃や空気清浄を心がけてください。
・アレルギー症状が軽いうちに免疫療法を
スギ花粉やダニなどのアレルギー性鼻炎が軽症でも重症でも、免疫療法は一定の効果があります。
どちらかというと重症になってから舌下免疫療法などを検討する人の方が多いのですが、できれば症状が軽いときに免疫療法で根治や軽減を目指してほしい。
アレルギー性鼻炎は粘膜の防御機能を低下させてしまうので、花粉やダニなどの抗原を身体に侵入させやすくします。アレルギーは抗原侵入がなければ起こらないので、軽症のうちに舌下免疫療法などを行うこともひとつの合理的な考え方です。
現状はスギ花粉症の舌下免疫療法の方がダニアレルギー向けよりも普及しているのですが、我々の臨床データではスギ花粉症の患者さんの20~30%がダニアレルギーでもあります。スギ花粉症の舌下免疫療法をやっている方で、ダニに陽性反応を示し、多少なりとも症状があるのであれば、スギ花粉症に対する治療に慣れて安定した段階で、ダニの舌下免疫療法も一緒に行う方がよいのではないかと思います。
舌下免疫療法に用いるシダトレンやミティキュアのことを「薬」と呼んではいますが、もとは原因物質を濃くしたり固めたもので、自然界にあるものです。例えば抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなるといった薬害的な副作用がありますが、免疫療法の薬にはありません。免疫療法の副作用はその時の身体にとって投与が過剰だった場合に起こるリアクションなので、いわゆる薬の副作用とは次元が異なります。免疫療法のメリットがもっと広く知れ渡って、アレルギー疾患が減少することを願っています。
Q:貴重なお話をありがとうございました!
(松根教授の解説『Part 2』はこちら↓をご覧ください)
アレルゲン免疫療法(減感作療法)とは?舌下免疫療法と皮下免疫療法の違いは?~日医大・松根彰志教授がやさしく解説
●松根彰志先生のプロフィール
- 1984年 鹿児島大学医学部医学科 卒業
- 1988年 鹿児島大学大学院医学研究科 博士課程 修了
- 1988年~1990年 米国ピッツバーグ大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 留学
- 2000年 鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教授 (2007年より大学院准教授)
- 2011年~日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長(臨床教授)
- 2015年~日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授
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