しばらくの間、鼻水が出たり咳が止まらないとき、何が原因かを悩むことがあります。そのようなときは、病院でアレルギー検査をして症状の原因を突き止めることが大切です。原因がわかれば、きちんと予防したり治療方針を立てることができるからです。
そこで、花粉症クエストとNPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会の共同連載「名医が教える!花粉症の治し方」では、NPOの理事であり、こすぎ耳鼻咽喉科クリニック院長の金井憲一先生に、アレルギー性鼻炎を調べるためのアレルギー検査の種類や内容、費用、子ども用のアレルギー検査などをわかりやすく解説していただきました!
目次
1.アレルギー検査の種類
- Q:鼻水がでるときのアレルギー検査にはどんなものがありますか?
・アレルギー性鼻炎の検査には3つのタイプ
(金井先生)
アレルギー性鼻炎と診断するためのアレルギー検査には大きく分けて3つあります。
・血液検査(RASTと呼ばれる血清中抗原特異的IgE抗体検査)あるいは皮膚テスト
・鼻汁好酸球検査
・鼻粘膜誘発試験
この3つのうち2つ以上が陽性であると、アレルギー性鼻炎と診断されます。
ひとつひとつご説明していきましょう。
・血清中抗原特異的IgE抗体検査(RAST)とは
●RAST法(血液検査)とは
(金井先生)
花粉症やダニアレルギー、気管支喘息などのアレルギー反応は、身体の中にアレルギーの原因物質(アレルゲン)に特有の抗体である特異的IgE抗体が産出されることによって起こります。
血液検査で、血清中にある原因物質ごとのIgE抗体の量を調べて、アレルギー反応が起こりうるアレルゲンを同定する試験が、RAST法とも呼ばれる血清中抗原特異的IgE抗体検査です。
簡便で定量的であるため、現在ではアレルギー検査の主流になっています。
Point! 花粉症発症のメカニズム
例えば、スギ花粉を大量に浴びると、スギ花粉に特異的なIgE抗体が産出され、皮膚や粘膜に存在するマスト細胞の表面に付着し待機しています。この状態を「感作」といいます。感作されただけではアレルギー反応は起きませんが、再びスギ花粉が身体に侵入してくると、マスト細胞などからヒスタミンなどの化学物質が放出されて、アレルギー反応が発症します。
●病院ごとに独自の検査セットも
(金井先生)
RASTでは約200種類ものアレルゲンを調べることができます。そこで、問診の段階で、何を調べるべきかを検索します。
単項目から検査することが可能ですが、通常、病院やクリニックで独自にアレルギー検査セットを作っていることが多いと思います。
例えば、花粉の中では東京のクリニックはスギ、ヒノキ、カモガヤ、北海道のクリニックではシラカンバ、カモガヤといった地域性を考慮して選択し、それに通年性アレルギー性鼻炎の原因に多いダニやカビ、ペットのネコなどを足して、病院ごとの検査セット作ります。
このセットをベースにして、もし患者さんがインコのそばに行ったらくしゃみが出るので調べたいとリクエストすれば、セットメニューにインコのアレルゲン単項目も付け加えて検査します。
Point! アレルゲンの種類
アレルゲンには体内への侵入経路から、「吸入性アレルゲン」「食物性アレルゲン」「接触性アレルゲン」に分類できます。
アレルゲンの種類
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【2023年版】花粉症処方薬の効き目と眠気の比較や同じタイプの市販薬の有無~アレグラ、ザイザル、アレロック、タリオン、ビラノア、デザレックスなど
●39種類、48種類を同時にスクリーニングできる検査
(金井先生)
一方、試薬品メーカーが提供する検査セットもあります。View39、MAST48(マストイムノシステムズⅤ)、MAST36(マストイムノシステムズⅣ)と呼ばれるものです。
39種類、48種類というように、同時に多項目をスクリーニング検査することが可能ですが、料金がやや高めになるので、患者さんが「とりあえず全部調べておきたい」と強い希望があるときに使用することが多いです。
View39で測定できる項目
(BMLホームページより引用)
「MAST48」で測定可能なアレルゲン48種類
(日立化成ホームページより引用)
●感作している状態かがわかる
(金井先生)
RASTの結果は0~6までの7段階にクラス分けされたスコアで報告されます。2以上を陽性とし、陽性であれば感作されていることを示します。
しかし、感作されているからといって、必ずしもアレルギーが発症するとは限りません。感作とは、あくまでアレルギー反応がおこりうる状態を示すものです。よって、View39などのスクリーニング検査の結果、多くのアレルゲン項目で陽性になったとしても、それらに対して直ちにアレルギー症状が強く出るわけではないのです。
例えば、検査の結果、ある食物アレルゲンのスコアが高く出た場合でも、患者さんはそれを食べても何も問題ないとか、軽い症状しか無かったりします。その場合には、食べることを一切控えるのではなく、注意しながら食べてください、ということなのです。
●検査結果は約1週間で
(金井先生)
RASTは通常、外部の検査センターにて試験を行いますので、検査結果が出るのに1週間程度かかります。検査結果は数字やグラフでわかります。それを患者さんに見せながら、予防法や治療法などを説明します。
View39 の検査結果シートの例
(BMLホームページより引用)
・皮膚テストとは
(金井先生)
皮膚テストとは、抗原エキスを体内に投与して皮膚反応をみる試験です。皮内テスト、プリックテスト、スクラッチテストなどがあります。
皮内テストは、注射器で前腕屈側に抗原エキスを注射し反応を確認します。
プリックテストは、皮膚に出血しない程度に微小な傷を付けて、その上に抗原エキスを置き浸透させて反応をみます。
スクラッチテストは、皮膚を少し引っかいた上に抗原エキスを置いて皮膚反応を見るものです。
どれも15〜20分後に紅斑(*発赤を伴った状態)や膨疹(*じんましん)を認めれば陽性と判断されます。
これらの皮膚テストは検査結果が早く出るというメリットがあるものの、腫れたりかゆみが出たりするので、患者さんから嫌がられることも多いです。特に、皮内テストはアナフィラキシーショックを起こす可能性もわずかにあるので、医師側もあまり選択しません。
RAST(血液検査)と皮膚テストは両方ともアレルギーの原因物質を調べる試験なので、昨今では皮膚テストよりもRASTを用いる方が主流です。
・鼻汁好酸球検査
(金井先生)
鼻の中を軽く拭くなどして鼻水を綿棒で少し集め、スライドグラスにつけます。それをハンセル染色と呼ばれる薬剤で染色し、好酸球の量が増殖しているかを確認する検査が鼻汁好酸球検査です。
アレルギー反応の初期段階では、身体の肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出され鼻水などの症状が起こります(即時型反応)。その後、数時間遅れて遅発型反応と呼ばれる症状が起こります。白血球の中の好酸球はアレルギーの起こっている部位に集まってくることがわかっていますが、好酸球が放出する物質によって鼻づまりなどの二次的な症状を引き起こすのです。
従って、鼻汁好酸球検査で好酸球の数の増加が認められるとアレルギー反応が陽性と判断されます。
花粉症などのアレルギー性鼻炎以外でも、風邪や血管運動性鼻炎(*寒暖差アレルギーとも呼ばれる)によって鼻水が出ますが、これらが原因のときには好酸球は増加しません。
好酸球
➡風邪と花粉症、寒暖差アレルギーの鼻水はこうやって見分ける
・鼻粘膜誘発試験
(金井先生)
鼻粘膜誘発試験は、抗原エキスを染み込ませた濾紙片(*ディスク)を下鼻甲介《かびこうかい》に留置して鼻症状の有無をチェックするものです。例えば、スギ花粉エキスを濾紙に湿らして鼻にちょっとつけると、スギ花粉に反応する人であればたちまちくしゃみや鼻水がますので、その場合は誘発テスト陽性と判断します。
・3つのうち2つが陽性だとアレルギー性鼻炎
(金井先生)
RAST(血液検査)か皮膚テストのどちらか、鼻汁好酸球検査、鼻粘膜誘発試験の3つのうち2つが陽性だとアレルギー性鼻炎と診断します。
ただし、医療の現場では、ある花粉が飛んでいる時期に花粉症と疑って来院される患者さんには鼻汁好酸球検査や鼻粘膜誘発試験を行わずに、RASTだけを行うこともあります。
なぜなら、例えば春先に病院に来る患者さんは、すでに大量のスギ花粉を浴び、くしゃみも鼻水も出ている状態のことが多く、また問診で毎年同じ時期に同じ鼻炎症状が出るとわかれば、鼻粘膜誘発試験は陽性と判断できるからです。その場合にはRASTまたは皮膚テストだけを行い、それが陽性であればアレルギー性鼻炎と診断します。
患者さんにとっても、自分の苦手なものを鼻先につける誘発試験などは辛いものですから、できるだけストレスなく簡便に検査を行ってもらうためでもあります。もし病院に行ってアレルギー検査をする際に鼻汁好酸球検査や鼻粘膜誘発試験を行わなかったとしても、医師が適切な判断の上でそうしているはずですから、心配しないでください。特にお子さんの場合には鼻粘膜誘発試験を行うことは少ないと思います。
2.子どものアレルギー検査
- Q:アレルギー疾患は低年齢化の傾向があります。小さい子どもでもアレルギー検査は可能ですか。
(金井先生)
子どものアレルギーの原因はスギ花粉かダニである可能性が高いので、まず第一にそれを調べます。
そのために、当院ではイムファストチェックというセット検査をよく利用しています。それだと指先から微量の血液を採取するだけですし、約20分でその場で検査結果が出るので、お子さんにも親御さんにも負担が少なくてすみます。大人にやるような採血は、小児科であれば対応可能なところも多いと思いますが、耳鼻科でお子さんにやることは少ないと思います。
Point! 簡易的アレルギー検査
指からごくわずかに採血し専用の検査キットに垂らすと、約20分で結果がわかる簡易的なアレルギー検査セットがあります。
●イムファストチェック J1/J2
【検査可能なアレルゲン項目】
イムファストチェックJ1:スギ花粉・ヤケヒョウダニ・ネコ上皮
イムファストチェックJ2:卵白・牛乳・コムギ
(LSIメディエンス ホームページから引用)
●イムノキャップ ラピッド 鼻炎・喘息 Ⅰ
【検査可能なアレルゲン項目】
ヤケヒョウヒダニ、ゴキブリ、ネコ皮屑、イヌ皮屑、スギ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ
(ThermoFisher ホームページより引用)
3.アレルギー検査の費用
- Q:アレルギー検査の費用はどのぐらいかかりますか。
(金井先生)
保険適用3割負担の場合で、初診料が850円、再診料が220円です。
RASTの場合、保険3割負担だと、アレルゲン1項目の検査につき330円、1ヶ月の間にアレルゲン13項目まで保険適用で検査ができるので、最大13項目だと4,290円です。
View39やMAST48などのスクリーニング検査は、13項目と同じ金額(4,290円)で検査ができます。
小さい子どもによく用いられるイムファストJ1では、保険2割負担(義務教育就学前)で1,010円、イムファストJ2で2,110円になります。
皮膚テストのスクラッチテストだと保険3割負担で430円です。
このように、大人であれば保険3割負担で4,000円~5,000円程度と想定してよいと思いますが、アレルギー検査の種類や検査する項目数などによって費用が変わりますので、具体的な金額は受診する予定の病院に事前に確認することをおすすめします。
(*価格は2018年9月時点)
4.アレルギー検査はどの診療科?
- Q:アレルギー検査を行いたい場合、どの診療科に行くのがいいでしょうか。
(金井先生)
基本は、症状が強い部位の診療科を選んで検査するのがよいと思います。
鼻炎の症状がある場合には、耳鼻科に行くのがよいと思います。アレルギー検査のうち、鼻汁好酸球検査や鼻粘膜誘発試験は他の診療科ではやらないこともあります。
お子さんの場合、症状が鼻炎だと最初に小児科ではなく耳鼻科に来られることも多いのですが、重症なときは小児科でも診てもうように紹介しますので、耳鼻科でも小児科でもどちらに行っても大丈夫です。
鼻の症状があまりなく、特に目の症状が強いような場合には、眼科で検査してもらうのがよいでしょう。
Q:金井先生、貴重なお話をありがとうございました!
【金井憲一先生のプロフィール】
- 昭和61年 都立日比谷高校卒業
- 平成6年 山梨医科大学(現山梨大学医学部)卒
- 平成6年 昭和大学病院 耳鼻咽喉科 入局
- 平成20年 昭和大学病院 耳鼻咽喉科 医局長
- 平成21年 昭和大学藤が丘病院 耳鼻咽喉科 准教授
- 平成26年 こすぎ耳鼻咽喉科クリニック 院長
- 医療法人翔和仁誠会 理事
- 昭和大学藤が丘病院耳鼻咽喉科 兼任講師
- NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会 理事
(こすぎ耳鼻咽喉科クリニックのホームページはこちら http://kosugi.sho-jin.com/)
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