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『ここまで進んだ!花粉症治療』アレルギー性鼻炎の最新治療や対策法とは~日医大・後藤穣准教授がやさしく解説!【市民講座10/5】

『ここまで進んだ!花粉症治療』アレルギー性鼻炎の最新治療や対策法とは~日医大・後藤穣准教授がやさしく解説!【市民講座10/5】

2019年10月5日、NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会と福井大学医学部耳鼻咽喉科の共催で、鼻の病気の最新情報を紹介する市民公開講座が開催されました。

ここでは、講演1として日本医科大学耳鼻咽喉科学 准教授 後藤穣先生がお話しした「ここまで進んだ!花粉症治療」の概要についてレポートします。

1.今回の市民公開講座の概要

今回の市民公開講座は、「第58回日本鼻科学会総会・学術講演会」に合わせて、NPO法人「花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会」と福井大学医学部耳鼻咽喉科「平成31年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)研究代表者」の共催で開催されたものです。

市民講座の冒頭では、第58回日本鼻科学会の会長で、NPOの理事長である日本医科大学大学院 頭頸部・感覚器学 大久保公裕教授より、「みなさんの鼻の悩みを少しでも解決できる活動を行いたいという想いで、学会の開催に合わせて市民講座を実施するに至りました」という開会あいさつがありました。

大久保公裕 NPO理事長(日本医科大学大学院 教授)

2.「ここまで進んだ!花粉症治療」講師:後藤穣先生

市民講座の講演1では、日本医科大学耳鼻咽喉科学 後藤穣准教授より「ここまで進んだ!花粉症治療」をテーマとした講演がなされました。

後藤穣先生(日本医科大学 耳鼻咽喉科学准教授)

●花粉症は自然に治癒しない

後藤先生「アレルギー性鼻炎とは、原因物質に対して何らかの反応を示す「Ⅰ型アレルギー」です。花粉によって起こる鼻の症状がアレルギー性鼻炎です。アレルギー性鼻炎は花粉以外にもダニなどのハウスダストで起こることがあります。

花粉症やアレルギー性鼻炎になる要因は、遺伝的なものもありますが、住環境や食生活も大きく関係していると考えられています。小児喘息などは年齢とともに軽くなったり治癒することがありますが、花粉症やアレルギー性鼻炎は自然に治癒することがあまりないのが特徴です。だからこそ、しっかり治療したり対策することが肝心なのです」。

(画像は後藤先生の講演より)

●花粉症のメカニズム

後藤先生「花粉症の症状がどのように起こるのかを簡単にご説明しましょう。人の鼻の中に花粉やホコリ(抗原)などが入ってくると、粘膜のマスト細胞にY字型のIgE抗体がくっつく。するとマスト細胞からヒスタミンと呼ばれる物質が放出されて、知覚神経を刺激します。その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、かゆみなどが起こるのです。つまり、ヒスタミンという物質をどこかで食い止めることができれば、これらの症状を抑えることができるわけで、これが花粉症治療法の基本的な考え方です」。

●スギ花粉症は30~40代がピーク

後藤先生「花粉症といえば国民病ともいわれるようにスギ花粉が代表的です。スギが多く生息している関東や東海ではほぼ3人に1人がスギ花粉症と報告されています。一方、西日本ではヒノキが多く生えているため、ヒノキ花粉症が多いのが特徴です。ダニなどの通年性のアレルギー性鼻炎は10代に患者さんが最も多いのに対して、春の季節に限定されるスギ花粉症はピークが30~40代であることも特徴の一つです」。

●ハンノキ花粉にも注意

後藤先生「花粉症はスギやヒノキだけでなく、5月にはカモガヤなどのイネ科植物が原因の花粉症があります。9月、10月はキク科のブタクサやヨモギが原因で花粉症になります。さらに、最近注目されているのがハンノキ花粉症です」。

(画像は後藤先生の講演より)

後藤先生「北海道ではシラカバ花粉症が代表的ですが、シラカバと同じカバノキ科のハンノキやイヌシデは東京の公園でもよく植えられています。ハンノキのアレルギーになると花粉症の症状はさほどひどくはないのですが、特定の果物や野菜などを食べると口がかゆくなり、食べられなくなってしまう「口腔アレルギー症候群」が起こることがあるのでやっかいです」。

◇ハンノキ花粉と関連する食べ物

リンゴ・モモ・イチゴ・メロン・スイカ・ダイズ(豆乳)・キウイ・オレンジ・山芋・マンゴー・アボガド・ヘーゼルナッツ・ニンジン・セロリ・ジャガイモ・トマト

◇シラカバ花粉と関連する食べ物

リンゴ・モモ・洋梨・イチゴ・ヘーゼルナッツ・クルミ・アーモンド・ココナッツ・ピーナッツ・ニンジン・セロリ・ジャガイモ・キウイ・オレンジ・メロン・マスタード

(後藤先生の講演より)

後藤先生「上のリストの中にダイズがありますが、ダイズでできている豆腐は熱処理をしているためハンノキ花粉症の人が食べても問題はないのですが、生のままである豆乳を飲むと、口腔アレルギーが発症して、口の周りが腫れたりかゆくなることがあるので注意してください」。

●一目瞭然!鼻の中の症状

(画像は後藤先生の講演より)

後藤先生「アレルギー性鼻炎の症状が実際にどのようなものかをお見せしましょう。

アレルギー検査のひとつに鼻誘発検査という鼻の中に原因物質を入れて症状を誘発させるテストがあります。それを行った結果が上の画像です。正常者は特に変化がないのに対して、アレルギー患者さんは10分もすると鼻の粘膜がはれ、鼻汁が多く出ていることがわかります。これが繰り返し起こっているのが花粉症などのアレルギー性鼻炎です」。

●治療の第一は、原因物質を寄せつけないこと

(画像は後藤先生の講演より)

後藤先生「アレルギー性鼻炎の治療の第一は、原因になる物質を排除、回避することです。

例えば、こまめに掃除する、掃除をしやすくするために部屋の床をフローリングにする、高温乾燥機能があるコインランドリーを利用してふとんを洗濯・乾燥する、などです。ユニークな方法としては、NHKのテレビ番組「ガッテン」で紹介された、夏場に車の中にふとんを入れて置く方法もあります。ダニは温度が50℃以上になると生きていられないので、真夏の炎天下の車内は灼熱ですから、こうするとダニがほとんど死滅するそうです。

また、スギ・ヒノキ花粉症の患者さんは花粉情報をもっと活用してほしいと思います。環境省の花粉観測システム「はなこさん」では地区ごとにリアルタイムの花粉飛散情報が提供されていますので、こまめに参照して花粉対策を行うと効果的ですのでおすすめします」。

●抗ヒスタミン薬治療は消火活動⁉

後藤先生「原因物質を回避しきれずに起こってしまった症状には薬で対処します。

スギ花粉症の症状は、①スギ花粉を吸い込む➡②IgE抗体ができる➡③ヒスタミンがでる➡④くしゃみや鼻水がでる、という起承転結にまとめられます。

抗ヒスタミン薬による治療法はこの③と④の間をブロックするものです。火事の消火活動に例えると、炎症という火が燃えているところに、薬という水を放って止めようとしているのです」。

●古いタイプの抗ヒスタミン薬は副作用に注意

後藤先生「抗ヒスタミン薬には多くの種類があり、開発された年代によって第一世代と第二世代に分類できます。市販の鼻炎薬の中にも抗ヒスタミン薬がよく含まれているのですが、その多くが第一世代と呼ばれる古いタイプです。第一世代の特徴は、眠気、口の渇き、男性の場合は尿が出にくくなるなどの副作用があります。さらには、脳の働きを抑制してインペアード・パフォーマンスと呼ばれる”ぼーっとする”状態になったり、肥満になりやすいという報告もあります。従って、このような市販薬は短期間使用するにとどめて、副作用を改善した新しいタイプの第二世代抗ヒスタミン薬などを病院で処方してもらうことをおすすめします」。

(画像は後藤先生の講演より Yanai K et al:Br J Clin Pharmacol53:296,2002、Tagawa M,Yanai K et al:Jpn J Pharmacol 83:253,2000より作成)

●貼り薬など新しい薬も登場

後藤先生「アレルギー性鼻炎の治療薬には、抗ヒスタミン薬の飲み薬以外にもさまざまな選択肢があります。最近発売されたのが貼り薬です。飲み薬の効果は飲むと一時的に上がりますが、時間とともに低下します。ところが貼り薬のメリットは有効成分が比較的長期にわたって一定に効くことです」。

(画像は後藤先生の講演より)

後藤先生「これまでの薬物療法は、出てしまったヒスタミンをブロックする作用が主でしたが、抗体をブロックする、すなわちヒスタミンが出ないようにする薬が近いうちに発売される予定です。実はこの薬は10年ほど前から喘息に、2年前からじんましんに使用されています。これが花粉症治療にも使用可能になる見込みです」。

●舌下免疫療法では錠剤が主流に

後藤先生「スギ花粉症を根本的に治すことを目指す舌下免疫療法でも、2018年に新しく錠剤タイプが発売になりました。これまで使用されていた液剤タイプ「シダトレン」に比べて、錠剤「シダキュア」は飲みやすく常温で管理できるなどのメリットがあるので、今後は錠剤に切り替わっていきます。小さいお子さんでもこの治療が可能です」。

(画像は後藤先生の講演より)

●レーザー治療は年内がおすすめ

後藤先生「鼻炎治療には鼻の中の粘膜をレーザーで焼く治療法もあります。スギ花粉症の方は春のシーズンになる前、できれば12月までに行っておくことをおすすめします。外来で局所麻酔を行おった上で15分程度で完了する治療法です」。

●まとめ「たかが花粉症されど花粉症」

後藤先生「アレルギー性鼻炎は、命にかかわる病気ではないものの、喘息やアトピー性皮膚炎などの引き金になることあります。鼻炎の段階でしっかり治療することが、生活の質を良くするために肝心ですから、放置しないで、早めに医師に相談して治療、対策を行ってください」。

♦後藤穣先生のプロフィール
  • 愛知県出身
  • 1991年 日本医科大学卒業
  • 2004年 日本医科大学耳鼻咽喉科学講師
  • 2011年 日本医科大学耳鼻咽喉科学准教授
  • 2014年 日本医科大学多摩永山病院 病院教授