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【花粉症市民講座】大人の病気「難治性ちくのう症(副鼻腔炎)」とは~日医大・松根彰志教授が解説!

【花粉症市民講座】大人の病気「難治性ちくのう症(副鼻腔炎)」とは~日医大・松根教授が解説!

私たちが一般的に呼ぶちくのう症は医学的には副鼻腔炎が正式名称です。その副鼻腔炎の中で、最近「難治性」と呼ばれる大人の副鼻腔炎が問題になっています。

難治性副鼻腔炎(難治性ちくのう症)はどういう病気なのか、どう治療するのか、日本医科大学 耳鼻咽喉科学 松根彰志教授が一般の人を対象にした「第6回花粉症市民講座」の中で講演されました。ここではその概要をレポートします!

1.「花粉症市民講座」とは

「花粉症市民講座」とは、NPO法人「花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会」が毎年開催している花粉症の患者さんなどを対象にしたセミナーです。第6回目の今年は、『花粉症市民講座~花粉症・鼻副鼻腔炎(難治性ちくのう症)治療の最前線~こうして新しい治療は誕生する~』をテーマに 2月17日(日)に開催されました。

セミナーの冒頭では、NPOの理事長である日本医科大学大学院 頭頸部・感覚器学 大久保公裕教授より、当NPOが花粉症や鼻副鼻腔炎でお困りの方々にアドバイスをする様々な活動を行っていることや、難治性副鼻腔炎などを今回のテーマに選んだ背景に関するご説明がありました。

大久保公裕 NPO理事長(日本医科大学大学院 教授)

2.難病指定、難治性鼻副鼻腔炎(ちくのう症)の症状と治療

セミナーの講演1として、日本医科大学 松根彰志教授から「難病指定、難治性副鼻腔炎(蓄膿症)の症状を治療」をテーマとする講演がなされました。

松根彰志 NPO副理事長(日本医科大学 耳鼻咽喉科学 教授)

●副鼻腔炎(ちくのう症)とは

松根先生「花粉症やダニなどのアレルギー性鼻炎は花粉やダニを吸入することによって起こる鼻の粘膜の病気です。一方、顔の中には空洞があり正常であればそこはCT写真で黒く写るのですが、病気になると灰色になります。鼻腔の周辺を副鼻腔といい、そこに炎症が起こることを副鼻腔炎といいます」。

副鼻腔の空洞が灰色(写真左側)になっている

(スライド画像:松根彰志教授より提供)

松根先生「副鼻腔に影ができるきっかけは、風邪(ウイルス感染)、細菌感染、花粉症などのアレルギーによって鼻腔と副鼻腔の間の風通しが悪くなり、粘液が貯まることです。すると黄色や青みがかった鼻水がズルズルと出るようになります。これが副鼻腔炎=ちくのう症です。

ちくのう症は薬物治療で鼻腔と副鼻腔の間の換気が良くなると調子が良くなったり、少し経つとまた悪くなったりを繰り返すことが多いのですが、原因は何かひとつというより体質や遺伝、環境などが複雑に絡んでいます。ところが最近、感染やアレルギーでは説明がつかない、従来とは異なるタイプのちくのう症が増えています」。

●今世紀に入ってから

松根先生「今世紀に入ってから注目されるようになった、この厄介なちくのう症を難治性副鼻腔炎または好酸球性副鼻腔炎と呼んでいます。厄介という意味は、治りくいとか、治ってもすぐに再発するということです」。

赤い字の項目が難治性副鼻腔炎(好酸球副鼻腔炎)の特徴

(スライド画像:松根彰志教授より提供)

松根先生「上のスライドの項目で特に重要なことは、難治性副鼻腔炎は喘息を合併する確率が高いことです。時にはガンコな中耳炎をが合併することもあります。現在、有効的な治療法には、ステロイド薬を内服することと手術を併用すること以外にありません」。

耳、鼻や副鼻腔、気管支に好酸球が異常に発生し炎症が起こる

(スライド画像:松根彰志教授より提供)

松根先生「耳、鼻、気管などの気道系に起こる難治性の病気は、相互に関連しながら増悪化する傾向があります。これが起こると花粉症の水っ鼻とは異なる、ドロドロした鼻水が鼻から気管に流れてくるようになります」。

●大人がかかる病気

松根先生「難治性副鼻腔炎は大人がかかる病気で、子どもに発症することはほどんどありません。喘息も小児喘息ではなく、成人喘息です」。

耳、鼻、喉に発症している大人の患者さんの好酸球を調べた写真

(*好酸球が多いことは炎症を起こしていることを示す)

好酸球(赤い顆粒)が鼻水、痰(たん)、耳汁に確認され、にかわ状の鼻水も

(スライド画像:松根彰志教授より提供)

●2015年に診断基準ができる

松根先生「難治性副鼻腔炎は2000年になった頃に初めて注目されました。そして2015年になってようやく診断基準と重症、中等症、軽症という重症度評価が決まりました。これらができたことによって、この病気は一般的なちくのう症とは異なると認定され、難病指定を受けることができたのです。難病指定を受けることによって診療費など経済的な面で公的なサポートを受けられるようになりました」。

●治療方法

松根先生「難治性副鼻腔炎の治療を行う第一歩は、正しい診断と重症度評価を行うことです。そのために、まずCT検査アレルギー検査を行います。アレルギーとの関連性は明確にわかっていませんが原因になるものを検索する上でアレルギー検査は欠かせません。

診断と重症度評価に基づいて手術とステロイドの内服による治療を行います。鼻の中に鼻茸(はなたけ)がぱんぱんにできている場合には薬だけでは治りません。手術が必要です。その手術の前後にステロイド薬を内服してもらいます。

鼻の手術というと、顔を切るようなものを想像をする方もいるのですが、現在の手術は内視鏡手術なので顔を切ることは一切ありません。ただし全身麻酔が必要なため入院してもらう必要はあります。

治療は保険診療が可能で、検査の結果によっては難病指定の申請をすることもできます。

喘息ではすでに治療に用いられていますが、新しい治療方法として抗体治療(*)が期待されています。おそらくこの1、2年でアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎でも抗体治療が行われるようになるでしょう。ただし、抗体医療の課題は医療費が高額になることです。保険適用になっても1回の治療で数万円かかるものもあります」。

(*)重症喘息患者さんに対する抗IgE抗体、抗IL-5抗体を使った治療などを抗体治療という

●定期的な通院で悪化させない

松根先生「手術やステロイド内服で鼻の調子が良くなっても、術後は長期にわたって定期的な外来診察が必要です。たまに、手術後2、3年たって鼻茸がぱんぱんにできた状態で再度来院される方がいます。それでは元も子もありません。年に数回定期的に外来に通院して、鼻の状態をチェックします。もし鼻に炎症が見られればステロイドを適宜投与して早めに治してしまう方がいい。この病気の特徴は治ったかなと思ってもすぐに再発することです。病院とは長い付き合いになると覚悟して根気強く治療を継続してください。

また、鼻の手術が無事に済んだら、次は合併率の高い成人喘息の専門医に診てもらい、症状が再発しないようにしてください」。

●ステロイドを少なくするために

松根先生「ステロイドは効果的な薬ですが、大量に長期に使用すると顔がむくむ、骨粗しょう症になるなど副作用があることは否めません。医師としてはできるだけステロイドの使用を減らしたいと考えます。そこで、日本医科大学武蔵小杉病院ではステロイドによる弊害を減らすための選択肢としてカテーテルで局所注入する治療を行っています。ステロイド薬で鼻の患部を洗浄するというイメージです。これで薬の全身への影響を減らすことが可能になります」。

(スライド画像:松根彰志教授より提供)

♦松根先生のプロフィール
  • 大阪府大阪市出身
  • 1984年 鹿児島大学医学部医学科 卒業
  • 1988年 鹿児島大学大学院医学研究科 博士課程 修了
  • 1988年~1990年米国ピッツバーグ大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 留学
  • 2000年 鹿児島大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 助教授 (2007年より大学院准教授)
  • 2011年~日本医科大学武蔵小杉病院 耳鼻咽喉科 部長(臨床教授)
  • 2015年~日本医科大学医学部 耳鼻咽喉科学 教授