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(2019年花粉症特集)花粉症の早めの対策「初期療法」は花粉症治療の基本です!~日医大・大久保公裕教授が解説

(2019年版)花粉症の早めの対策「初期療法」は花粉症治療の基本です!~日医大・大久保公裕教授に聞く 初期療法にどのような薬を用いるのか、始めるタイミング、第2世代抗ヒスタミン薬のタイプの違いなど

花粉症の早めの対策「初期療法」をご存知ですか?春の花粉シーズンをできるだけ楽に過ごすための基本となる治療法が「初期療法」です。

花粉症クエストとNPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会の共同連載「名医が教える!花粉症の治し方」では、花粉症に悩む患者さんや花粉症を予防したいと考えている方々に治療や対策法の参考になる情報をお伝えしています。今回は、NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会 理事長の大久保公裕 日本医科大学教授に、初期療法の薬の種類、効果、始めるタイミングについてわかりやすく解説していただきました。

1.初期療法とは

  • Q:「初期療法」が花粉シーズンを楽に過ごすのにおすすめだと聞きます。どのような治療法ですか?

・初期療法とは

「初期療法」とは特別な薬を使うものではなく、花粉が飛び始める前や症状がひどくなる前に花粉症の治療を始めることをいいます。

初期治療を実施して症状が抑えられたら、その良い状態を維持するために花粉シーズンが終わるまで治療を継続します。これが「維持療法」です。治療を継続する理由は、症状が出ないのでシーズン途中で服薬をやめたら、その後花粉が大量に飛散して症状が悪化したというようなことを防ぐためです。せっかくの初期療法の効果が台無しになってしまいますからね。

・初期療法を始めるタイミング

スギ花粉やヒノキ花粉の飛散時期はだいたい決まっています。1ヶ月も前後することはなく、例えば東京ではスギ花粉が飛散開始(*)するのはほぼ2月13日から2月20日の間です。それをふまえて、①飛散開始の合図と同じとき、②飛散開始の約1週間前、③少しでも症状が出たとき、この3つのタイミングのいずれかで治療を始めます。

(*)飛散開始日:1cm²当たりの花粉数が2日連続して1個以上になった初日

患者さんの過去の症状をみてどのタイミングから治療を開始したらいいかを決めます。例えば毎年症状が重い方は②の飛散開始1週間前、それほど重くない方は飛散開始の後でも③の少し症状が出たとき、といった具合です。

医療費の経済的な側面も合わせて考えると、予防的な目的で症状が出るずっと前から始めなくても、軽い症状が出始めてから治療をスタートしてもいいように思います。

薬を飲み始めるタイミング

初期療法を始めるタイミング

・初期療法のメカニズム

花粉症の鼻水などの症状は、花粉が原因によるアレルギー反応でヒスタミンなどの化学伝達物質が体内で放出され、それが細胞表面にある受容体にくっつくことで発症します。

花粉飛散がピークになった時点では、ヒスタミン受容体がヒスタミンにかなり占拠された状態になっています。抗ヒスタミン薬はヒスタミンが受容体にくっつくのをブロックする作用の薬ですから、その段階で抗ヒスタミン薬を用いても、薬の効果を100%発揮できません。

また、ヒスタミン受容体は活性型と非活性型に分かれて繰り返しています。ヒスタミンが体内で放出されると活性型のヒスタミン受容体が反応するのですが、非活性型が増えていればヒスタミンによる影響、すなわち花粉症の症状を減らすことができます。抗ヒスタミン薬には「インバース アゴニスト」という考え方があり、ヒスタミンが放出される前に使用すると非活性型の受容体が増加するのです。

また、抗ヒスタミン薬以外にも、抗ロイコトリエン薬や抗プロスタグランジンD₂・トロンボキサンA₂薬なども初期療法に使用されます。これらの薬には「インバース アゴニスト」という考え方は適用できないのですが、過去の臨床試験では早い時期から使用すると効果がでることが明らかになっています。

初期療法をしたケースと、初期療法をしなかったケースの花粉症症状の違い

初期療法を行うと、症状が軽くなったり、症状が出るのが遅くなるメリットがあります。

・初期療法の効果

このようなメカニズムを理由に、抗ヒスタミン薬などを花粉が飛散する直前から服用すると、症状を軽くしたり、花粉量が少ないシーズンだと症状そのものが出ない、または症状が出るのを遅らせる効果が期待できます。

例えば、症状が最も重いときの症状スコア(*)が3だった人が、初期療法をやっている場合には、最大の症状が出たとしても1や2に抑えられるというイメージです。

(*)症状スコアとは、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状の具合から、最重症4+、重症3+、中等症2+、軽症1+、(無症状-)とスコア化すること

【症状の重症度】

花粉症症状の重症度 それぞれの症状の強さから重症度を分類します。くしゃみは1日の発作回数、鼻水は1日に鼻をかんだ回数、鼻づまりは口呼吸の時間などを用いて決まります。鼻アレルギー診療ガイドライン2016より引用、改変

それぞれの症状の強さから重症度を分類します。くしゃみは1日の発作回数、鼻水は1日に鼻をかんだ回数、鼻づまりは口呼吸の時間などを用いて決まります。

(鼻アレルギー診療ガイドライン2016より引用、改変)

2.初期療法に使用される薬

・主な薬の種類

  • Q:初期療法ではどんな薬が用いられるのでしょうか?

花粉症の症状は、くしゃみ、鼻水が先行して出ることが一般的なので、抗ヒスタミン薬を用いることが多いです。

もし患者さんが毎年鼻づまりが最もひどい場合には、抗ヒスタミン薬に加えて抗ロイコトリエン薬または抗プロスタグランジンD₂・トロンボキサンA₂薬も使うことをおすすめしています。Th₂サイトカイン阻害薬も鼻づまりがひどい患者さんの初期療法に用いることがあります。

通年性アレルギーの症状もある方で、あらゆる症状が出てしまうような患者さんには鼻噴霧ステロイド薬を初期療法から用いることもあります。

初期療法に用いる薬は副作用が少なく、服薬回数が少ないものをメインに選択します。

  • Q:花粉ピーク時期になっても同じ薬を使い続けるのですか?

初期療法で症状が抑えられていれば、そのまま薬を継続します(維持療法)。

しかし、初期療法をしていても症状が出てきてしまった場合には、それまでの薬に加えて別の薬をアドオンします。例えば、初期療法で抗ヒスタミン薬を処方していた患者さんが鼻づまりを発症するようになった場合には、経口薬として抗ロイコトリエン薬を足したり、鼻噴霧ステロイド薬を追加します。

・抗ヒスタミン薬のタイプ

  • Q:抗ヒスタミン薬には種類がたくさんあります。どんなタイプがあるのでしょうか。
●眠気やインペアード・パフォーマンスの観点

抗ヒスタミン薬は開発された年代によって第1世代と第2世代とにわかれます。第2世代は第1世代より脳への浸透性が低く、眠気や作業効率の低下(*)などの副作用が起こりにくいタイプです。通常、初期療法には第2世代の薬が使用されますが、患者さんの中には風邪薬に含まれているのと同じ第1世代の抗ヒスタミン薬を希望する方もいます。

(*)集中力や判断力、作業能率が低下することをインペアード・パフォーマンスとよぶ。眠気を自覚しているかどうかは問わず、また自覚しにくい。鈍脳とも呼ばれる。

【抗ヒスタミン薬の H1 受容体占拠率による脳内移行性の評価】

*グラフの上の薬剤が眠気が少ないと評価されている。

*以下の表には入っていないが、現在はビラスチン(製品名ビラノア)がH1 受容体占拠率が最も少ない(=眠気が少ない)と評価されている。

抗ヒスタミン薬の H1 受容体占拠率による脳内移行性の評価 エバスチン(エバステル)、ケトチフェン(ザジテン)、ロタラジン(クラリチン)、フェキソフェナジン(アレグラ)、エピナスチン(アレジオン)、デスロタラジン(デザレックス)、セチリジン(ジルテック)、ベポタスチン(タリオン)、オロパタジン(アレロック)、レポセチリジン(ザイザル)、ビラスチン(ビラノア)、アゼラスチン(アゼプチン)、メキタジン(ニポラジン、ゼスラン)、d-クロルフェニラミン(ポララミン)、オキサトミド(セルテクト)、ジフェンヒドラミン(レスタミンコーワ)、ヒドロキシジン(アタラックス)

抗ヒスタミン薬は脳内ヒスタミンH₁受容体占拠率がそれぞれ異なり、占拠率50%以上が鎮静性、50~20%が軽度鎮静性、20%以下が非鎮静性とされ、眠気などの指標とされる。グラフの上の薬剤が眠気が少ないと評価されている。d-クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンは第1世代抗ヒスタミン薬、それ以外は第2世代抗ヒスタミン薬。

(Yanai K. Pharmacol & Ther. 2007;113:1-15を一部改変)

●効き目の速効性や持続性の観点

また、効き目が強い・弱いという観点でいえば、患者さんによる個人差はありますが、研究データではどの抗ヒスタミン薬も最大限の効果(*効き目の強さ)はほとんど変わらないと報告されています。

ただし、最大限の効果に到達する時間(速効性)や効果の持続性に違いはあります。

速く最高血中濃度に到達する薬剤が、速効性が高いタイプであり、血中濃度が半減するのに長くかかる薬剤が、効果の持続性が優れるタイプ(=服薬回数が少ない)とされています。

【主な第2世代抗ヒスタミン薬の最高血中濃度達成時間比較】
グラフの下の薬剤の方が速効性に優れているとされる
【主な第2世代抗ヒスタミン薬の最高血中濃度達成時間比較】 エバスチン(エバステル)、ケトチフェン(ザジテン)、ロタラジン(クラリチン)、フェキソフェナジン(アレグラ)、エピナスチン(アレジオン)、デスロタラジン(デザレックス)、セチリジン(ジルテック)、ベポタスチン(タリオン)、オロパタジン(アレロック)、レポセチリジン(ザイザル)、ビラスチン(ビラノア)

【主な第2世代抗ヒスタミン薬の血中濃度半減期比較】
グラフの上の薬剤の方が持続性に優れているとされる
主な第2世代抗ヒスタミン薬の血中濃度半減期比較 エバスチン(エバステル)、ケトチフェン(ザジテン)、ロタラジン(クラリチン)、フェキソフェナジン(アレグラ)、エピナスチン(アレジオン)、デスロタラジン(デザレックス)、セチリジン(ジルテック)、ベポタスチン(タリオン)、オロパタジン(アレロック)、レポセチリジン(ザイザル)、ビラスチン(ビラノア)

・目の初期療法には点眼薬

  • Q:目のかゆみにも初期療法はありますか?

患者さんの症状の中で、結膜が炎症を起こしやすく、目のかゆみがひどい方には、点眼薬を用いる初期療法も一般的です。

点眼薬の場合でも、初期療法では副作用の少ないものを使用しますので、最初からステロイド点眼薬のような強い薬を利用することはほとんどありません。

・市販薬はOK?

  • Q:初期療法にドラッグストアなどで買える市販薬を利用してもいいのでしょうか?

スポット的にスイッチOTC医薬品(*)を使用するのはかまわないと思います。

しかし、病院での診断を受けずに市販薬だけを用いて初期治療や維持療法をするのはおすすめしません。忙しくて病院に行けずに市販薬を使い始めた場合には、できるだけ早期に病院に行って診察を受ける方がいいでしょう。

(*)スイッチOTC医薬品とは、病院で処方される医療用医薬品として用いられた成分が、一般用に転換(スイッチ)された医薬品のこと。調剤薬局や薬店・ドラッグストアなどで、処方せんなしに買うことができる。(例:処方薬アレグラのOTC市販薬が「アレグラFX」)

3.花粉症対策のコツ~セルフケア

  • Q:初期療法が花粉症対策に効果的であることがわかりました。その他にもアドバイスがあれば教えてください。

花粉症対策の基本はマスクやメガネなどを用いて花粉を避けるようにするセルフケアです。初期療法で薬を飲んでいても、花粉が飛び始めたら以下のようなセルフケアを必ず実行してください。それによって治療がずっと効果的になりますよ。

【セルフケアの3か条】

  • 花粉を持ち込まない:マスク、メガネ、ポリエステル系のアウター など
  • 花粉を排除する:手洗い、うがい、鼻うがい など
  • 花粉をまき散らさない:部屋干し、こまめな掃除、空気清浄機 など

Q:大久保先生、貴重なお話をありがとうございました!

■大久保公裕先生プロフィール

免疫アレルギー性疾患を専門に研究し、花粉症治療において日本を代表する医師。国や企業と共同でアレルギー性鼻炎の新しい免疫療法の開発を積極的に進めている。花粉症の舌下免疫療法の開発では大規模臨床試験の責任者として治療法確立に大きく貢献した。

  • 1984年 日本医科大学 卒業
  • 1988年 日本医科大学大学院 修了
  • 1989年~1991年 アメリカ国立衛生研究所(NIH) 留学

(現在)

  • 日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部感覚器科学分野 教授
  • NPO花粉症鼻副鼻腔炎治療推進会 理事長
  • 日本耳鼻咽喉科学会 代議員
  • 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 理事
  • 日本アレルギー学会 常任理事
  • 第58回日本鼻科学会総会・学術講演会」(2019年 東京)会長

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