NHKスペシャル「人体」(2018年1月14日放送)を撮影
NHKスペシャル「シリーズ・人体 神秘の巨大ネットワーク」の第4集『万病撃退!“腸”が免疫の鍵だった』で、腸に7割が集中するといわれる免疫細胞と、腸に住み着く腸内細菌によって、人の免疫機能のバランスが保たれていることが説明されました。免疫機能は時に暴走し花粉症などのアレルギー疾患を引き起こすことがありますが、それを抑える役割を担っているのが腸内細菌の「クロストリジウム菌」であることも番組で紹介され、人の臓器ではない細菌が人の細胞と連携しながら健康に大きな影響を与えていることに、番組出演者全員が驚きを隠しきれませんでした。
いったい花粉症やアレルギーの緩和にも期待されるクロストリジウム菌とはどのようなもので、どうしたら腸内に増やすことができるのでしょうか?
目次
1.クロストリジウム菌とは
・自分の涙や汗にもアレルギー反応
ナターシャさん
イギリス在住のナターシャ・コーツさんは、オリンピックを目指すほど運動が得意で活発な女性でしたが、約5年前に「マスト細胞活性化症候群」と診断されます。
今、ナターシャさんは、食べ物や飲み物、花粉、ハウスダスト、香水、シャンプーなどはもちろん、自分の涙、汗、髪の毛まで、ありとあらゆるものにアレルギー反応を示すようになってしまいました。髪の毛をすべて剃っているのはそのためです。
重篤なアレルギーショックで病院に緊急搬送されたことは数知れずあり、1日に何種類もの薬を服用しながら生活しています。
➡がんばるナターシャさん
自分の「涙」にアレルギー反応を示す女性、死を覚悟で続ける挑戦とは?
・クロストリジウム菌が「落ち着いて」という物質を放出
ナターシャンさんの腸内細菌を調べたところ、クロストリジウム菌という腸内細菌が少ないことがわかりました。クロストリジウム菌が少ない現象は、ある日突然手や足のしびれ、筋肉が動かなくなる症状「多発性硬化症」に見舞われた日本人女性でもみられました。
クロストリジウム菌には『落ち着いて』という”メッセージ物質”を分泌する機能があり、このメッセージ物質が、本来攻撃する必要のない花粉やホコリなどの異物、自分の身体までも攻撃している免疫細胞に対して、攻撃を抑える効果があるからではないか、と番組で説明します。クロストリジウム菌が免疫寛容(免疫の抑制)を司る「Tレグ細胞」の産生に関係しているとみられるからです。
・クロストリジウム属細菌とは
クロストリジウム属細菌には複数の種類が存在します。中には、破傷風菌やボツリヌス菌などの病原性細菌もあります。人間といった哺乳動物の消化管に常在する無害な共生細菌の多くもクロストリジウム属細菌に含まれます。
科学技術振興機構や東京大学の研究で、その無害な共生細菌の種類のクロストリジウム菌が免疫寛容(免疫の抑制)を司る「Tレグ細胞」の産生を強く誘導することが明らかになりました。
2.どうやって増やす?
・食物繊維で増える
番組では、クロストリジウム菌が多数常在しているマウスの一方に食物繊維が大量に含まれるエサを与え、もう一方のマウスには食物繊維があまり含まれないエサを与える実験を紹介します。
その結果は、食物繊維が大量に含まれるエサを食べ続けたマウスはクロストリジウム菌が大きく増加し、食物繊維が少ないエサを食べていたマウスはほとんどクロストリジウム菌が増加しませんでした。
つまり、食物繊維がクロストリジウム菌の重要なエサになっていることがわかります。
・曹洞宗のお坊さんはアレルギーが治る
番組では、食物繊維が豊富に含まれる食事がクロストリジウム菌を増加させることに関与していることを検証するために、曹洞宗のお坊さん20名の検便を行います。
このお寺に入山した若いお坊さんたちの多くが、お寺に入る以前には悩んでいた花粉症やアトピー症状が治まったり軽くなったという話があったからです。
検便の結果、20名のうち19名のお坊さんはクロストリジウム菌が平均の日本人より多く常在していることがわかりました。
・お坊さんが食べている精進料理
お坊さんたちが毎日食べているのは、野菜や穀類で作られた精進料理。豊富な食物繊維が含まれています。
精進料理の例 By Chris 73
この食生活がお坊さんたちの腸内にクロストリジウム菌を増やし、結果的に花粉症などのアレルギー症状を緩和したり、抑制する効果があるとみられます。
Point! 精進料理
精進料理の特徴は、野菜・豆類など、植物性の食材を調理して食べることにある。動物性の食材は禁忌とされている。
禅宗のひとつ曹洞宗では、開祖の道元禅師が宋に仏教を学びに渡ったとき、料理を含めて日常の行いそれ自体がすでに仏道の実践であるという弁道修行の本質を知ったことから、料理すること、食事を取ることは特に重要視されている。道元禅師が帰国後に書いたのが『典座教訓』(てんぞきょうくん)と『赴粥飯法』(ふしゅくはんぽう)で、ここから精進料理が生まれたという。
・日本食は食物繊維の宝庫
ではお坊さんにならないと食物繊維を十分に摂取できないかといったら、そんなことはありません。
私たちが昔から食べている典型的な日本食は食物繊維の宝庫。日本人の腸内には長年の食習慣から他の国の人よりもクロストリジウム菌が多く住み着いているのです。
ところが、近年の急激な食の欧米化によって私たちの腸内細菌のバランスが乱れています。
それが花粉症やアレルギー疾患が増加している原因となっているのです。
本来の日本人の食習慣にのっとり、昔ながらの一般的な食事をとっていれば、自然にクロストリジウム菌の腸内常在を維持、増加させ、免疫機能のバランス調整ができているのです。
3.食物繊維が豊富な食材とは?
食物繊維が豊富に含まれる食材といえば、穀物、いも、豆、野菜、果物、きのこ、海藻などです。
おいしそうな和食
まさに精進料理や一般的な日本食の食材ですね。よい食事をとるように心がけて、クロストリジウム菌を腸内に増やし健康に努めましょう。
Point! 食物繊維
食物繊維とは、人の消化酵素では消化することのできない成分で、小麦ふすまに含まれるセルロースに代表される水に溶けない不溶性食物繊維と、果物に含まれるペクチンに代表される水に溶ける水溶性食物繊維とがあります。
不溶性食物繊維はお通じを改善し、整腸作用が期待できます。
水溶性食物繊維は血糖値の上昇を抑制し、コレステロールの排出にも関与しています。
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