花粉症の治療で、点鼻ステロイド薬(*鼻噴霧用ステロイド薬ともいう。点鼻薬は通称鼻スプレーともよばれる)を処方されることが増えています。欧米ではかねてから内服薬の抗ヒスタミン薬と同じように多く使用されていましたが、日本でも「鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版(改定第8版)」で新たに花粉症の初期療法(*花粉飛散直前や症状が軽症の段階から用いられる薬)に用いられる薬のひとつになったことも、処方数が増えている要因です。
ここでは代表的な医療用医薬品(処方薬)の点鼻ステロイド薬をご説明し、ドラッグストアで手に入る市販の点鼻ステロイド薬をご紹介します。
(参考文献)鼻アレルギー診療ガイドライン2020
➡処方薬と同じタイプの市販薬を知っているとなにかと便利です↓↓
【2023年版】花粉症処方薬の効き目と眠気の比較や同じタイプの市販薬の有無~アレグラ、ザイザル、アレロック、タリオン、ビラノア、デザレックスなど
目次
1.点鼻ステロイド薬とは
点鼻ステロイド薬とは、ステロイド成分が含まれた点鼻薬(鼻スプレー)です。ステロイド成分は、鼻の粘膜で起こるアレルギー症状に対して高い抗炎症作用があるために、花粉症向けの薬のカテゴリの中で点鼻ステロイド薬は症状改善効果の高い薬として位置づけられています。
その特徴は、以下の通りです(*)
- 効果が強い
- 効果発現は早く、1日~2日
- 副作用は少ない
- 鼻アレルギーの3症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)に等しく効果がある
- 投与部位のみ効果が発現する
(*)参照:「鼻アレルギー診療ガイドライン2020」
以前は、鼻づまりなどの症状が重い場合に処方されることが多かったのですが、花粉飛散直前または症状が現れた時などの初期段階の炎症から使用することで、花粉飛散ピーク時の症状悪化を抑制できることが明らかとなり、2016年版の「鼻アレルギー診療ガイドライン」から初期療法のひとつとされました。
点鼻ステロイド薬のもうひとつの特徴は、抗ヒスタミン薬の内服薬などによくみられる眠気やインペアードパフォーマンス(*眠くないのに集中力、判断力、作業効率の低下すること)がないことです。喉や鼻から液だれがするから嫌だ、味がまずいから苦手という患者さんもいるものの、眠気が伴わずに強い効果が出現するのは点鼻ステロイド薬のメリットといっていいでしょう。
2.代表的な点鼻ステロイド薬
点鼻ステロイド薬の代表的な製品は以下の通りです。
製品名 | 主成分 |
---|---|
アラミスト | フルチカゾンフランカルボン酸エステル |
エリザス | デキサメタゾンシペシル酸エステル |
ナゾネックス | モメタゾンフランカルボン酸エステル |
リノコート | ベクロメタゾンプロピオン酸エステル |
フルナーゼ | フルチカゾンプロピオン酸エステル |
ここからは個別にみていきましょう。
・アラミスト
アラミスト点鼻液27.5μg 56噴霧用(gskホームページより)
後述する「フルナーゼ」(フルチカゾンプロピオン酸エステルが主成分)の後継品であるフルチカゾンフランカルボン酸エステルが主成分の「アラミスト」は2009年に販売開始されました。
フルナーゼが1日2回の噴霧だったのに対し、アラミストは1日1回各鼻腔に1噴霧ずつでよくなりました。また、デバイス(噴霧器)が人間工学に基づいて設計された「横押し式」で使いやすく、液だれがしにくいことも特徴となっています。
- ・用法用量:(成人)1回各鼻腔に2噴霧(1噴霧あたりフルチカゾンフランカルボン酸エステルとして27.5μgを含有)を1日1回投与。
(小児)通常1回各鼻腔に1噴霧(1噴霧あたりフルチカゾンフランカルボン酸エステルとして27.5μgを含有)を 1日1回投与。 - ・ 薬価:1672.5円/1キット(56噴霧用)、3513.80円/1キット(112噴霧用)*2022年4月1日時点
- ・後発品(ジェネリック):なし
- ・市販薬:なし
・エリザス
エリザス点鼻粉末200μg28噴霧用(日本新薬HPより)
「エリザス」の主成分はデキサメタゾンシペシル酸エステルで、1日1回、各鼻腔に1噴霧ずつ投与します。パウダー(粉末)剤のエリザスは2009年12月に発売された当初は噴霧ごとにカプセルで薬を充填する容器でしたが、2012年6月には14日間分の薬を噴霧器に入れる定量噴霧式で残数カウンターが付いているタイプが登場しました。
- ・用法用量:(成人)1日1回、各鼻腔に1噴霧ずつ(1噴霧あたりデキサメタゾンシペシル酸エステルとして200μg)投与。
- ・ 薬価(28噴霧用):1347.6円/瓶 *2022年4月1日時点
- ・後発品(ジェネリック):なし
- ・市販薬:なし
・ナゾネックス
(MSDホームページより)
2008年に発売された「ナゾネックス」の主成分はモメタゾンフランカルボン酸エステルで、各鼻腔に2噴霧ずつ1日1回投与します。56噴霧の2週間用と112噴霧の4週間用があります。
ナゾネックスのオーソライズド・ジェネリック(*先発医薬品メーカーに特許等の使用を許可されたジェネリック医薬品)として、「モメタゾン」が2019年6月より発売になりました。
小児に使用することも可能です。
- ・用法用量:(12歳以上)1日1回、各鼻腔に2噴霧ずつ(1噴霧あたりモメタゾンフランカルボン酸エステルとして1日200μg)投与。(12歳未満の小児)1日1回、各鼻腔に1噴霧ずつ(モメタゾンフランカルボン酸エステルとして1日100μg)投与。
- ・ 薬価:1114.7円/瓶 (56噴霧用)、2228.7円/瓶(112噴霧用)*2022年4月1日時点
- ・後発品(ジェネリック):あり
- ・市販薬:なし
- ・後発品「モタメゾン」薬価:629.3円/瓶 (56噴霧用)、1386円/瓶(112噴霧用)*2021年1月21日時点
・リノコート
リノコートパウダースプレー鼻用25μg(帝人HPより)
2003年11月に発売された「リノコート」はベクロメタゾンプロピオン酸エステルが主成分のドライパウダーのステロイド点鼻薬です。1日2回1噴霧します。噴霧器にはカウンターがついており、残存量が確認しやすくなっています。
ステロイド薬と一緒に入っているドライパウダーが鼻粘膜を覆うことで、花粉アレルゲンが鼻粘膜と接触するのを阻止したり、薬を鼻粘膜に付着させて効果を持続させる特徴があります。
リノコートには主成分ベクロメタゾンプロピオン酸エステルのジェネリック医薬品(後発医薬品)が複数あります。
小児にも使用可能です。
- ・用法用量:通常、各鼻腔内に1日2回(1回噴霧あたりベクロメタゾンプロピオン酸エステルとして25μg)、朝、夜(起床時、就寝時)に噴霧吸入する。なお、症状により適宜増減。
- ・ 薬価:843.3円/瓶 *2022年4月1日時点
- ・後発品(ジェネリック):あり
- ・市販薬:あり
・フルナーゼ
(gskホームページより)
フルチカゾンプロピオン酸エステルが主成分の「フルナーゼ」は、1日に2回噴霧します。1回あたりは1噴霧が通常ですが、症状により1日の最大使用量は8噴霧まで可能としています。
フルナーゼには主成分フルチカゾンプロピオン酸エステルのジェネリック(後発医薬品)が複数あります。
小児用のフルナーゼ点鼻液25μg56噴霧用もあります。
2019年11月に、フルナーゼと同成分・同量配合された市販薬「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」が発売されました。販売開始から3年たち、要指導医薬品から第一類医薬品へ移行。薬剤師さんの説明の元、インターネット通販が可能になりました。価格は1,580円(税抜)です。
市販薬「フルナーゼ点鼻薬」の詳しいことはこちらをご覧ください↓
【花粉症薬】病院のステロイド点鼻薬「フルナーゼ」と同じ市販薬が新発売!花粉アレルギーのくしゃみ、鼻水、鼻づまりに効く⁉
- ・用法用量:成人は、通常1回各鼻腔に1噴霧(フルチカゾンプロピオン酸エステルとして50μg)を1日2回投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日の最大投与量は、8噴霧を限度。
- ・ 薬価:507.8円/瓶(28噴霧用)、912.6円/瓶(56噴霧用)*2022年4月1日時点
- ・後発品(ジェネリック):あり
- ・市販薬:あり
3.小児にも使える点鼻ステロイド薬
花粉症、ダニアレルギーなど子どものアレルギー性鼻炎は増加傾向にあります。それに伴い、小児にも使える点鼻ステロイド薬は増えています。
- 小児用フルナーゼ25μg
通常 1 回各鼻腔に 1 噴霧(フルチカゾンプロピオン酸エステルとして25μg)を 1 日 2 回投与する。症状により適宜増減するが、 1 日の最大投与量は、8 噴霧を限度とする。
- ナゾネックス50μg
通常、12歳未満の小児には、各鼻腔に 1 噴霧ずつ 1 日 1 回投与する(モメタゾンフランカルボン酸エステルとして 1 日100μg)。
通常、12歳以上の小児には、各鼻腔に 2 噴霧ずつ 1 日 1 回投与する(モメタゾンフランカルボン酸エステルとして 1 日200μg)。
- リノコート25μg
通常、各鼻腔内に 1 日 2 回( 1 回噴霧あたりベクロメタゾンプロピオン酸エステルとして25μg)、朝、夜(起床時、就寝時)に噴霧吸入する。なお、症状により適宜増減する。
4.市販の点鼻ステロイド薬
点鼻ステロイド薬には処方薬と同じタイプのスイッチOTC医薬品(市販薬)があります。
上の章でご紹介した点鼻ステロイド薬の中では、「リノコート」のベクロメタゾンプロピオン酸エステルは「ナザールαAR0.1%」などのスイッチOTC医薬品になりました。
2018年12月には、2005年に販売中止になった処方薬「シナクリン点鼻液」をスイッチOTC化した「ロート アルガード クリアノーズ 季節性アレルギー専用」が新発売に。
また、2019年11月に、フルナーゼと同成分・同量配合された市販薬「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」が日本で初めて発売されました。
市販薬の点鼻ステロイド薬は、18歳未満では使用してはいけないという年齢制限(フルナーゼは15歳以上)や、花粉による季節性のアレルギー性鼻炎などの短期間使用に限定されています。
これから以下でご紹介する市販の点鼻ステロイド薬には、抗ヒスタミン薬(*眠気の副作用がある)や血管収縮剤(*頻繁に使うとリバウンド現象が起きて鼻づまりが悪化する)は入っていません。
・ナザールαAR0.1%C <季節性アレルギー専用>(2020年12月新発売)
2021年シーズン向けに2020年12月10日に新発売された「ナザールαAR0.1%C <季節性アレルギー専用>」は人気のステロイド点鼻薬「ナザールαAR0.1%」にメントールの爽やかな清涼感を加えた新商品です。
処方薬(医療用医薬品)の「リノコート」の有効成分であるベクロメタゾンプロピオン酸エステルが同じ濃度で含まれています。ベクロメタゾンプロピオン酸エステルは、アンテドラッグステロイドと呼ばれ、患部で作用した後、速やかに分解されるので、全身性の副作用が起こりにくいのが特徴です。
通常、1日2回朝と夕に、左右の鼻腔内にそれぞれ1噴霧ずつ噴霧します。
1日最大4回(8噴霧)まで使用できますが、使用間隔は3時間以上おいてください。
花粉の飛散ピークに合わせて、1年間に3ヵ月まで使用できます。
18歳以上が対象です。
抗ヒスタミン薬(*眠気の副作用がある)や血管収縮剤(*リバウンド現象がある)は入っていません。
希望小売価格は1,980円(税抜)です。Amazon販売価格は
円(税込)(2023年1月15日時点)です。【指定第2類医薬品】ナザールαAR0.1%C<季節性アレルギー専用> 10mL ※セルフメディケーション税制対象商品
・フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>(2019年11月新発売)
2019年11月1日に新発売された「フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>」は日本の市販薬で初めてステロイド成分「フルチカゾンプロピオン酸エステル」(処方薬名「フルナーゼ」)が配合されています。
通常、1日2回朝と夕に、左右の鼻腔内にそれぞれ1噴霧ずつ噴霧します。
1日最大4回(8噴霧)まで使用してもかまいませんが、使用間隔は3時間以上おいてください。
花粉の飛散ピークに合わせて、1年間に3ヵ月まで使用できます。
15歳以上が対象です。
抗ヒスタミン薬(*眠気の副作用がある)や血管収縮剤(*リバウンド現象がある)は入っていません。
要指導医薬品から第一類医薬品へ移行。薬剤師さんの説明の元、インターネット通販が可能になりました。アマゾンではまだ販売されていませんが、楽天では販売されています。(2023年1月15日時点)
希望小売価格は1,580円(税抜)です。
・ロート アルガード クリアノーズ(2018年12月新発売)
2018年12月19日に新発売された「ロート アルガード クリアノーズ 季節性アレルギー専用」は日本の市販薬で初めてステロイド成分「フルニソリド」(処方薬名「シナクリン点鼻液」)が配合されています。
通常、1日2回朝と夕に、左右の鼻腔内にそれぞれ1噴霧ずつ噴霧します。
両鼻腔内に1度ずつ 1日2回(朝・夕)使用できます。
花粉の飛散ピークに合わせて、1年間に1ヵ月まで使用できます。
18歳以上が対象です。
抗ヒスタミン薬(*眠気の副作用がある)や血管収縮剤(*リバウンド現象がある)は入っていません。
希望小売価格は1,800円(税抜)です。
2022年1月時点で指定第二類医薬品です。インターネット通販が可能ですが、アマゾンでは販売されていません。(2023年1月19日時点)
「ロート アルガード クリアノーズ」の詳しいことはコチラ↓をご覧ください。
花粉症の鼻づまり対策に市販薬初配合のステロイド入り鼻スプレー新発売!「ロート アルガード クリアノーズ 」
・ナザールαAR0.1%
浅田真央さんがイメージキャラクターとしておなじみの「ナザールαAR0.1%」は1噴霧中に処方薬(医療用医薬品)の「リノコート」と同じ濃度のベクロメタゾンプロピオン酸エステルが含まれています。
通常、1日2回朝と夕に、左右の鼻腔内にそれぞれ1噴霧ずつ噴霧します。
1日最大4回(8噴霧)まで使用できますが、使用間隔は3時間以上おいてください。
花粉の飛散ピークに合わせて、1年間に3ヵ月まで使用できます。
18歳以上が対象です。
抗ヒスタミン薬(*眠気の副作用がある)や血管収縮剤(*リバウンド現象がある)は入っていません。
希望小売価格は1,980円(税抜)です。Amazon販売価格は
円(税込)(2022年1月15日時点)です。【指定第2類医薬品】ナザールαAR0.1%<季節性アレルギー専用> 10mL ※セルフメディケーション税制対象商品
・エージーアレルカットEXc(2018年12月新発売)
「エージアレルカットEXc」は、「ナザールαAR0.1%」と同様に処方薬「リノコート」と同じベクロメタゾンプロピオン酸エステルが同濃度含まれています。
スッとするクールタイプで、鼻から液ダレしにくい高粘性液剤です。
通常、1日2回朝と夕に、左右の鼻腔内にそれぞれ1噴霧ずつ噴霧します。
1日最大4回(8噴霧)まで使用できますが、使用間隔は3時間以上おいてください。
花粉の飛散ピークに合わせて、1年間に3ヵ月まで使用できます。
18歳以上が対象です。
抗ヒスタミン薬(*眠気の副作用がある)や血管収縮剤(*リバウンド現象がある)は入っていません。
希望小売価格は1,980円(税込)です。Amazon販売価格は
円(税込)(2023年1月15日時点)です。
・パブロン鼻炎アタックJL(2018年9月新発売)
2018年9月に、ジェル成分が入った「パブロン鼻炎アタックJL<季節性アレルギー専用>」が発売されました。「ナザールαAR1.0」と同じ「リノコート」のベクロメタゾンプロピオン酸エステルを同濃度配合した点鼻薬です。ジェル成分が含まれることで液だれがしにくく、「点鼻薬は苦い」というお悩みを解消します。
Amazon販売価格は1,342円(税込)です。(2023年1月15日時点)
【指定第2類医薬品】パブロン鼻炎アタックJL〈季節性アレルギー専用〉 8.5g ※セルフメディケーション税制対象商品※セルフメディケーション税制対象商品
「パブロン鼻炎アタックJL」の詳しいことはコチラ↓をご覧ください。
液だれしにくい!市販の鼻スプレー「パブロン鼻炎アタックJL」新発売~人気の「ナザールαAR1.0」との違いは?
*「ナザールαAR」「コンタック鼻炎スプレー」「エージアレルカットEX」は2020年に販売中止になりました。
5.点鼻ステロイド薬の比較表
最後に処方薬の点鼻ステロイド薬を比較して表にまとめましたので、ご参考にしてください。(2020年1月時点)
6.新治療「ゾレア」登場!
2020年シーズンから、花粉症の重症患者向けに、皮下注射による新しい治療法「ゾレア」がスタートしました。
ゾレアはすでに気管支喘息やじんましん向けに使用されている薬ですが、花粉症向けに世界で初めて適用可能になりました。
ゾレアの詳しいことは、以下をご覧ください。
スギ花粉症の新治療「ゾレア」とは?効果・副作用や対象者、薬の費用など日医大・大久保公裕教授がやさしく解説
➡人気の「アレグラFX」と同じ効能効果で価格が安め
【第2類医薬品】アレルビ 56錠 ※セルフメディケーション税制対象商品
➡2022年1月に新登場!アルピタット史上最強
【第2類医薬品】マイティアアルピットEXα7 15mL ※セルフメディケーション税制対象商品
➡目のかゆみはもちろん、充血、異物感、これらすべてのアレルギー症状に効く!
アルガード史上、最強の処方設計! クリニカル処方!
【第2類医薬品】ロートアルガードクリニカルショット 13mL セルフメディケーション対象品